研究実績の概要 |
本研究は、看護情報システムに入力される経過記録の自由記載文を解析し、質的点検(内容監査)の自動化に利用可能なプログラムの研究開発を最終目標としている。 平成30年度は、看護記録に記載された文章の特徴を解明することを目的として、看護記録の自由記載文110,785文と新聞記事21,426文を比較解析した。はじめに形態素解析ソフトMeCabで解析して一般名詞を抽出した。その結果、看護記録では医療用語が、新聞記事では行政や政治に関連する用語に加えて指示語の使用頻度が高かいことが明らかになった。また、動詞に着目して詳細を解析した結果、看護記録と新聞記事のいずれの文章でも客観的な事実を表現する動詞では両者に共通の動詞がみられた。しかし、考えを示す「思う」の頻度は新聞記事が看護記録よりも高い結果だった。また、看護記録の方が新聞記事よりも同じ動詞が出現する頻度がやや高い傾向を示した。具体的には、患者の動作や行動を示す動詞(「ふらつく」,「落ち着く」)やコミュニケーションに関係する動詞(「伝える」,「もらう」)であった。 次に、係り受け解析ソフトCaboChaで文章を解析し、1文に含まれる文節数を比較した。看護記録は5割以上の文が1文あたり5文節までで形成されていたが、新聞記事では,5から9文節で形成される文が約5割であった。これは、看護記録の方が短い文が多いことを意味する。次に、係り受け関係にある2文節間の距離、すなわち係り先までの文節数とそれらの頻度を比較した。その結果、看護記録と新聞記事のいずれにおいても、殆どが隣接する文節と係り受け関係にあることが判明した。これは、いずれも1文あたりの文節数が少ないことが影響していると考えられた。
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