研究実績の概要 |
介護老人福祉施設での褥瘡の有病率調査では、有病率0~57.0%の報告があり、施設間の対策には差があることが指摘されている。介護施設においては、医療施設と同様に「褥瘡マネジメント加算」などの体制が整えられているが、施設内のケア指針の整備が十分でない(永野 2006)ことが報告されていて、現状では「褥瘡マネジメント加算」では十分な効果が得られていないと推察される。本研究では、介護老人福祉施設の褥瘡体制と予防的スキンケア管理の実態(過程)を調査することを目的とする。全国老人福祉施設協議会会員である特別養護老人ホーム4,374件より無作為に1,400施設を抽出し郵送にて質問紙を配布した。調査項目は、褥瘡ケアの質評価(特定機能病院における褥瘡予防対策の質指標 小柳 2009)を参考にして施設のケアの質を図る評価指票を作成した。実施期間は2019年2月~3月末であった。分析には統計ソフトSPSS Statistics Ver.26.0を使用した。本調査は、大学の倫理審査の承認をうけて実施し、回答の自由意志と匿名性に配慮した。1400施設に郵送し239施設より回答があった(回収率は17.1%)。施設の開設主体は社会福祉法人が95.0%であった。入居者は要介護3以上の中重度が64.0%を占めていた。リハビリ専門職の配置のある施設は約15.0%であった。施設での褥瘡保有者は平均5.4±7.5人/年で、調査時点でのスキンテア保有者は平均11.2±20.5人と施設間で差がみられた。皮膚・排泄ケア認定看護師に相談できる環境にある施設は8.4%であった。褥瘡対策に関連する体制加算を導入している施設は、再入所栄養連携10.5%、低栄養リスク改善11.7%、排泄支援加算10.9%、生活機能向上連携11.7%、褥瘡マネジメント加算は28.9%であり、各施設で体制を整えるうえでの課題があることが示唆された。
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