本研究の目的は、チーム医療の一環として専門看護師が開設する看護専門外来の実践状況とその評価、ならびに運用がもたらす医療への貢献について明らかにするとともに、看護専門外来のシステム化に向けた示唆を得ることである。わが国の医療を取り巻く環境は医師不足、在院日数の短縮化や高齢社会などから在宅医療が推進されている状況である。また外来看護の役割は診療補助中心の看護であり、がんや認知症など多くの課題を有する患者や家族への十分な対応が困難である。卓越した看護実践力を持つ看護師による個別支援が求められる。 一方、看護師の教育は大学化が進み、がん看護や老人看護など13分野の高度な実践力を有する看護師が大学院専門看護師教育課程から排出されている。このような専門看護師を活用すべく外来診療にシステム化された体制を創出できれば、チーム医療の一環として医療へ貢献でき意義があると考える。そこで目的を達するために4段階に分けて実施計画を立案した。文献検討では専門看護師が実施する看護専門外来は少なく概念分析はできなかった。また、「看護専門外来」「看護外来」をキーワードとしたWeb調査を行い全国の施設で開設されている看護専門外来または看護外来のホームページを閲覧した。担当する専門看護師は少なく認定看護師のような他の資格保持者であった。国際学術集会を通して米国、英国、豪州、中国などの有識者であるナースプラクテイショナー(高度実践看護師)や教育研究者から情報収集を行ったが、看護専門外来のシステムはこれらの国にはなくユニークであると捉えられた。全国の看護専門外来に携わる専門看護師や受診している患者へのインタビュー調査を開始したが、調査への困難を来し計画を変更した。しかしその後、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言やまん延防止の措置によって調査を中止し、研究の目的を十分果たすことができなかった。
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