本研究の目的は、国内における災害現場でのトリアージによって、黒のトリアージ・タグを付された傷病者(以下、黒タグ者)に関わる活動に必要とされる能力を養うための教育プログラムを開発することである。 本年度は、災害時におけるトリアージ黒エリア(黒タグ者を収容する場所)の担当看護師に必要な教育内容を検討し、精選するために、全国の災害拠点病院731施設の看護管理者を対象としたデルファイ調査を行った。当該結果の概要は以下のとおりである。1) 第1回調査は226名より回答の返送があった(回収率30.9%)。第2回調査への参加にも同意が得られたのは158名で、133名より回答の返送があった(回収率84.2%)。回答者の特性としては、女性が123名(92.5%)、年齢は50歳代が103名(77.4%)であった。2) 黒エリアの看護師の行為、職場環境、経験等に関する35項目のうち33項目で「不可欠」か「するほうが望ましい」とする回答が80%以上を占めた。3) 黒エリアの担当看護師に必要な行為を問う24項目のうち、「不可欠」の回答率が高かった上位項目は「医師との連携」(66.9%)、「安否情報確認部署との連携」(62.4%)、「死亡者の所持品の確認」(61.7%)等であった。4) 黒エリアの担当看護師に必要な職場環境6項目の全てで「不可欠」の回答率が高く、「職務終了後に体験を話し合える環境」(78.9%)、が最も高かった。また、看護師に必要な経験等5項目の全てで「あったほうが望ましい」の回答率が高く、「終末期看護の経験」(75.2%)が最も高かった。この調査結果を基に「不可欠」「するほうが望ましい」と回答された項目を中心に教育内容を定めて教材の作成に取り組む準備を進めている。
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