研究課題/領域番号 |
16K12003
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
中原 るり子 共立女子大学, 看護学部, 教授 (90408766)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 災害医療 / 患者情報管理 / 人事管理 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究計画の概要は、地震などの巨大災害時における傷病者の管理および看護職員の人事管理(勤怠管理・シフト管理)システムの構築に向けた基盤を整備することである。具体的には、災害拠点病院である東邦大学医療センター大森病院がある大田区の被災状況と災害時に来院する傷病者数と看護必要度の予測調査である。 大田区(行政)によれば、大田区の京浜急行線から東側にかけての海岸による低地及び南側の区境を流れる多摩川の谷間の河川低地は地盤が悪く、地震による影響を強く受け、液状化現象の恐れもある地域が広がっている。また、東北大震災のような津波が発生すれば、海水が河川を遡上し、堤防の低い地域は河川が氾濫する恐れがあることも分かった。人口約69万人が住む大田区の被害想定は、最悪の場合で1228人が死亡、12184人が負傷し、48835棟が全壊・焼失するとされ、避難所避難者数は260,174人にのぼることが分かった。 災害拠点病院である大森病院には重傷者が運ばれてくることが予想されるが、収容人数には限りがあるため、入院中の患者の移動・移送が必要となる。また、広範囲で患者情報を共有し、トリアージによって適切な病院への負傷者の搬送も必要になることが予測された。超急性期から亜急性期(1ヶ月)の看護職員は、自らも被災しながら、許容範囲を超えた慣れない業務に追われることが予想できた。 このような状況を踏まえ、傷病者の管理ではトリアージと患者情報の共有が重要なポイントとなり、看護師の人事管理の成否が病院機能の維持に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。 研究協力者である東邦大学医療センター大森病院の吉原副院長は、広範囲の医療施設で災害時の患者情報を共有する仕組みを開発中である。次年度は患者情報の共有化を進めるとともに受け入れる患者情報と連動する看護師の人事管理システムの試作を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は大田区の被災状況や傷病者の実情をつかむことができ、被災時の病院が置かれるであろう状況を捉えることができた。東邦大学医療センター大森病院でも、被災時の対応として、入院中の患者の移動・移送を想定した対応を考えていることも把握できた。さらに、大田区全体で医療救護の対応が考えられつつあり、行政・医師会・薬剤師会・消防など複数の職種が連携して準備している状況も捉えることができた。 患者の情報管理(電子カルテに相当するもの)の開発については、専門的な知識・技術だけでなく、資金・時間などコストがかかることが分かった一方で、災害時の患者情報管理システムの開発はすでに進められており、独自に開発するよりは、そうした開発組織と連携しながら進めていくほうが、効率的・経済的であると考えられた。しかし、そうした研究開発組織との連携するにあたり仲介者がいないことや大学の業務が多忙であることから、やや計画が遅れている。 また、患者の情報をもとに看護必要度を算出し、看護師の人事管理に連動させる手がかりをつかみたかったが、それも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、災害時傷病者管理システムの検討をさらに進める。 研究協力者から研究開発組織を紹介してもらうと同時に、自らも東北大学などの研究機関との連携を図り、災害時の患者情報管理システムを作成し、リアルタイムで傷病者の全体像が災害対策本部で把握できるようにする。 災害時の傷病者の看護必要度を算出し、災害時看護職員勤怠管理システムに生かす研究を進める。勤怠管理では、すでに稼働しているシステムがあり、これが災害時でも利用可能把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度、パーソナルコンピューター、レーザープリンタ×1台、統計ソフトなどの設備を購入する予定であったが、現在使用中のプリンターのインクの在庫があり、これを使い切ってから新たなパソコン、プリンター、統計ソフトを購入するほうが望ましいと判断した。 また、災害時の患者管理システム開発の専門家のコンサルテーションを受ける予定であったが、患者管理システムが別な研究チームで進められていることがわかり、独自に進めるべきか、連携しながら進めるべきか判断に迷ったため、コンサルテーションは平成29年度にまわすことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、パーソナルコンピューターと統計ソフト、プリンタ、カメラを購入する予定である。また、平成29年度に災害時の患者管理システムの開発の専門家のコンサルテーションを受ける予定である。現在東北大学の研究者との連携を模索中であり、旅費や会議費として予算を使用する予定である。
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