研究課題/領域番号 |
16K12007
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研究機関 | 日本赤十字看護大学 |
研究代表者 |
吉田 みつ子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 准教授 (80308288)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 看護倫理 / 高度実践看護師 / 継続教育 / 専門看護師 / 倫理調整 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、 (1)専門看護師(CNS)の倫理調整に関する実践事例経験の特徴、役割開発プロセスの特徴の明確化、(2)CNS、Doctor of Nursing Practiceレベルの倫理教育の現状と課題の明確化、(3)CNSの倫理調整実践の実態・特徴、役割開発における学習ニーズに関する質問紙枠組案を検討した。(1)6名にインタビュー調査を実施した。倫理調整に関する経験として、「大切にしたいケアがつながらない」「患者・家族・医療者の思いをつなげる」「患者の生き方に関わる責任・自己の存在の意味を問われる」「患者に良いケアを届けるにはナースが安心してケアできること」「患者の権利を守るには時には闘い、筋を通す」「どんな決断になってもケアしていく」というモチーフが語られた。これらより、事象の本質を‘考える’ことと、ケアの質を高め、よりよいケアを探すこととがじかに結び合って展開され、患者・家族の生の物語の連鎖の中でCNSが自己の存在の意味を問い、‘自らをひらき、自ら破れて変容する’ような 経験の深まりを経験していると特徴づけられた。 (2)CNSの継続教育ニーズには、倫理的合意形成の話し合いにおけるファシリテータの役割、倫理カンファレンスの運営・ファシリテーション、スタッフのリフレクションを促す力、組織/職場風土の改善・形成に関わる力が明らかになった。大学院修士課程教育の中では取り上げられていない移植医療、法的・ビジネス・保険に関する倫理的課題、多職種間で生じる倫理的問題、公平な医療の提供に関する問題などの知識が求められ、リサーチエシックス、クリニカルエシックス、ビジネスエシックス、リーガルエシックスが必要と示唆された。 (3)以上より‘経験にひらかれた実践知’を開発するのに適した学習/教育方法が必要であること、既存の研究結果から抽出されたニーズをもとに質問紙調査の枠組みを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に計画していた(1) 専門看護師(CNS)の倫理調整に関する実践事例経験の特徴、役割開発プロセスの特徴の明確化については、インタビューと分析を並行して実施しているため、半数にとどまっているが、CNSの倫理調整経験の特徴が明らかになりつつある。CNS取得後5年未満および看護管理経験者のインタビューを追加し、合計12~13名程度までインタビューを継続予定である。(2) CNSの継続教育の現状と課題については、文献検討より明らかにすることができた。倫理調整に関するCNSの実践は、統合的な実践力であるため、継続的に幅広く、CNSの実践力に関する文献を検討していく必要があると考える。平成28年度は国内外の学会等に参加し情報収集を行う予定であったが、平成29年度以降の計画に延期した。(3) CNSの倫理調整実践の実態・特徴、役割開発における学習ニーズに関する質問紙枠組案の検討についても、今後の教育プログラムの基盤となる理論(実践知、状況との省察的対話等)の検討と並行して進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、(1)平成28年度からの継続としてCNS取得後5年未満および看護管理経験者6~7名のインタビューを実施し、CNSの倫理調整に関する実践事例経験の特徴、役割開発プロセスの特徴を明確化する。(2)CNSに対して、施設内外での倫理調整に関する実践活動・自己研鑽の実態、教育ニーズについて質問紙調査を実施する。(3)(1)(2)と並行して、国内外の専門家にヒアリングを行い、倫理的合意形成の話し合いにおけるファシリテータの役割、倫理カンファレンスの運営・ファシリテーション技法、医療倫理におけるビジネスエシックス、リーガルエシックスの内容と教育方法について意見を求め、教育プログラム案を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に計画していた(1) 専門看護師(CNS)の倫理調整に関する実践事例経験の特徴、役割開発プロセスの特徴の明確化については、インタビューと分析を並行して実施してきたため、計画していたインタビュー数の半数にとどまった。また、近隣でのインタビューを実施したため交通費の発生が抑えられた。 また、平成28年度は国内外の学会等に参加、専門家にヒアリングを行う、情報収集を行う予定であったが、国内外の文献レビューを十分に踏まえて実施することが必要であり、延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、平成28年度からの継続としてCNS取得後5年未満および看護管理経験者6~7名のインタビューを実施し、CNSの倫理調整に関する実践事例経験の特徴、役割開発プロセスの特徴を明確化するため、次年度使用額として助成金を使用する。 また、国内外の専門家に対する情報収取として、倫理的合意形成の話し合いにおけるファシリテータの役割、倫理カンファレンスの運営・ファシリテーション技法、医療倫理におけるビジネスエシックス、リーガルエシックスの内容と教育方法に関する事項を系統的に収集することとし、助成金を使用する。
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