研究課題
本邦は末梢動脈疾患(PAD)患者が増加しており,症状は進行性の下肢血管の虚血・閉塞を主とするが,進行すると,安静時疼痛・壊疽などの重症虚血肢となり,生活が困難となるばかりか生命も脅かされるなど,著しいQOLの低下がある.ガイドラインに基づく治療戦略は確立しつつあるものの,再建血管の開存率向上にはまだまだ課題は多い.この課題に対し,我々は振動器を下肢・下腿にあてがい,振動を与えることで,末梢循環の促進効果をさまざまな対象で検討してきた.その結果振動器を用いた介入(振動ケア)を追加して行うことにより,血行再建術後の血管開存状態をより維持できる可能性が期待できる.振動ケアがもたらす末梢循環促進効果を縦断的に評価することで,有効性を検証した.対象者は下肢PADの中でも,間歇性跛行により,血行再建術を受ける(受けた)患者であり,振動ケアの効果を確認するためには,膝窩以下の狭窄・閉塞を有する患者をリクルートすることが必要である.末梢循環の評価には,国際的なガイドラインでも用いられている経皮酸素分圧(TcPO2)を用いることとし,主観評価(VascuQOL)と合わせ,2時点(振動実施前と実施2週間後)で評価を行うこととした.下肢血管インターベンション実施者(A群)と未実施者(B群)は各3名ずつ計6名から同意を得,介入実施を確認した.2週間の振動効果あり・または不変は,TcPO2ではA・B群ともに2名(66.6%),VascuQOLではA・B群ともに3名(100%)であった.少なくとも振動実施により,病態が悪化した対象者はなく,「足のつり」が改善したと語る対象者が4名(66.6%)であった.今後の課題は,対象者リクルートである.「振動介入プロトコール」,「評価プロトコール」の見直しを行い,振動介入の有効性を明らかにする必要がある.
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