研究課題/領域番号 |
16K12023
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
酒井 知恵子 鳥取大学, 医学部, 助教 (90734327)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 味認識 |
研究実績の概要 |
本研究課題に先立ち申請者は、以下の1から3の結果から、味認識の変化が糖尿病患者の甘味嗜好を変化させる可能性を見いだした。1.BMI25以上(肥満者)の糖尿病患者では、旨味認識が弱く甘味嗜好が強い。2.食事療法指導後に糖尿病患者の甘味嗜好が弱くなっていた。3.食事療法指導後に糖尿病の改善が確認された患者群では、旨味成分を含む食品を好む傾向があった。これらの解析結果から、本研究では、「旨味成分の摂取に基づいた新規食事指導が糖尿病患者の甘味嗜好を弱め糖尿病改善に効果を発揮するか明らかとする」。また、BDHQ(食習慣アセスメント)法を用いて栄養素・食品摂取量・調理法の実態を明らかとすることを目的として設定している。研究目的を達成する為、以下の解析を行う。1.食事療法前後の糖尿病改善群の旨味の認識度(旨味味覚閾値)を調べる。2BDHQ法を用いた食事療法前後の食品摂取量・調理法を基に旨味成分を含む食品摂取量を明らかにする3.旨味認識が強い患者群での甘味嗜好の変化について検討する。また、それら患者群での糖尿病改善効果について血中インスリン・レプチン・GLP-1値の変化を検討する。4.新規食事指導による糖尿病患者の甘味嗜好改善効果の検討。今年度は、薬物療法を受けていない2型糖尿病者30名を対象にして以下の検討を行った。①食事療法前の食品摂取量・栄養素のバランスを、簡易型自記式食事歴法質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire: BDHQ)を用いて明らかにした。BDHQは、過去1ヶ月間の食事摂取量を評価する質問票で、専用の栄養価計算プログラムによって、1日に摂取された30種類の栄養素、50種類の食品の量を算出した。5つの基本味覚(甘味,塩味,酸味,苦味,旨味)の認知閾値を1日の食事摂取量との関連について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病患者では甘味嗜好が強く食事療法を困難にしている。甘味嗜好の改善に旨味成分の摂取あるいは旨味刺激が有効である考えを支持する研究結果はいまだ存在していない。嗜好のコントロールに着目した食事指導法は確立していない。平成28年度は、薬物療法を受けていない2型糖尿病者30名を対象として1日の食事摂取量について以下の項目を検討した。 1.食事療法前の1日の食事摂取量を、簡易型自記式食事歴法質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire: BDHQ)により明らかにした。BDHQは、過去1ヶ月間の食事摂取量を評価する質問票で、専用の栄養価計算プログラムによって、栄養素のバランス、1日に摂取された30種類の栄養素、50種類の食品の量を算出し実態を明らかとした。 2.食事療法前に調査したBDHQより、1日の食品摂取量に含まれる糖分の摂取量、糖分を含む食品、調理方法(生・焼く・煮る・炒める)、摂取タイミング(食事としての副食・間食)を抽出した。 3.食事療法前に調査したBDHQより、1日の食品摂取量に含まれる旨味成分の摂取量を算出するために旨味成分としてのグルタミン酸が、比較的多く含まれている食品(海藻、野菜、魚)と食品の調理方法(生・焼く・煮る・炒める)を抽出した。4.5つの基本味覚(甘味,塩味,酸味,苦味,旨味)を味覚ごとの平均閾値で群分けし、1日の食事摂取量との関連について検討した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では「味覚刺激を利用して食嗜好を調節する」という全く新しい視点から、糖尿病の効果的な食事指導の確立を目指し、患者本人による食事療法と生活習慣病の改善の基盤を築くことを最終目的とする。旨味成分の摂取量に依存して甘味嗜好が減弱(甘味認識が強くなる)することを科学的データに基づいて実証する。平成29年度以降の実施計画としては、BDHQ法を用いた食事療法前後の食品摂取量・調理法を基に旨味成分を含む食品摂取量を明らかとし、食事療法前後で変化が確認される食品摂取量・調理法を突きとめる。また、2型糖尿病患者の食事療法の前と食事療法3ヶ月後での旨味の検知閾値と認知閾値を全口腔法味覚検査により検証する。甘味に対する検知閾値および認識閾値を同様に調べる(甘味嗜好の強い人では、甘味の認識が弱くなっている事が知られている)旨味認識が強い患者群の甘味に対する検知閾値および認識閾値を調べ、甘味嗜好の変化について全口腔法味覚検査法により検討する。さらに、食事指導前後での糖尿病改善効果を比較するために、血糖値の上昇に伴ってその値が上昇する HbA1c、血糖値を下げるインスリン、食後に血中濃度が上昇するレプチン、インスリン分 泌を促す GLP-1、インスリン感受性を強める作用を持つアディポネクチン、それらの濃度についてそれぞれ測定する。また、体重、体脂肪、BMI、TG、HDL-C、LDL-C に ついても食事療法前後での変化を検討する。平成29年度の解析結果をもとに平成30年度は、SPSS (Ver. 21)を用いて統計解析を行う。群間比較、前後比較することにより統計学的な変化があるか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカ糖尿病学会に参加予定であったが、年度始めであり参加困難であった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は(2017年6月)アメリカ糖尿病学会にて演題発表が決まっており、学会参加費用、旅費として使用する。
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