研究実績の概要 |
本研究は,2型糖尿病中高年女性患者を対象とした「食卓の営みに着目した看護モデル」(2012,遠藤)を,合併症の進行や余病の発症による健康/病,加齢に伴う発達,社会状況など生活者として人生上の移行にゆらぐ糖尿病患者へと対象者を拡大して活用できるか,実践現場での有効性を検討する目的で実施したものである. 研究対象となる患者の確保が難しく,研究期間を1年延長して事例数の確保に努めた. 最終年度は,新規に事例数を増やしたが辞退もあり,最終的な事例数は,前年度同様の7名となった.事例数の増加につながらなかった理由は,移行の種類をこれまでに収集できていない事例に焦点化して厳選したことと,援助者による対象者の選定が,研究開始当初よりも高度化し,より複雑で難しい事例にモデルを適応したことにある.ただし,3名で前年度から援助を継続し比較的長期に渡りデータ収集ができ,さらに1名から,援助終了1年後にインタビューによるデータ収集をすることができた.これよりデータの質は充実した.事例検討会は,4回開催し,7名の事例を検討した.参加者は5~7名で,遠隔地とつなぐスカイプの参加者は1~4名であった. 研究期間全体を通した研究成果としては,研究の目的である,食卓の営みに着目した看護モデルを健康/病や人生移行にある1型糖尿病や男性も含めた糖尿病患者に活用することができるかについて,糖尿病療養指導経験10年以上のエキスパートの看護師4名の実践により有用であると確認された.実践の質の向上を目的とした事例検討会を通してモデルの活用と対象理解が深まり,個々の実践上のニーズに応えるべく海外の研究者の招聘講演会に参加して移行理論を学習したことから,より困難な事例へと難易度を上げてモデルを活用できた.しかし,事例数の少なさから,性,病型,移行の種類により援助の効果が異なるかを明示するまでの結論は得られていない.
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