研究課題/領域番号 |
16K12037
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
片岡 千明 (近藤千明) 兵庫県立大学, 看護学部, 講師 (40336839)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / フットケア / 末梢動脈疾患 / 糖尿病 / 糖尿病足病変 |
研究実績の概要 |
本研究は糖尿病患者の末梢動脈疾患(PAD)を予防する看護ケアを開発し、その効果を検証することを目的としている。PADは下肢に生じる動脈硬化であり、進行に伴い血管障害が生じると足病変から下肢切断につながることもある。しかしながらPADが無症候性に進行することから本人が病気の発症に気づいたり、早めに治療を受けることが難しい病態である。 そこで今年度は、日頃自分の身体を気にかけたり、手入れをしたりすることが少ない糖尿病患者が、自分自身の身体を理解していくことを促すための介入モデルを作成した。この介入は、フットケアを用いており、「ケアされる体験の積み重ね」により、足を見ることに慣れ、足への関心が高まり、足を通して日頃の生活を考えることで、身体への関心を高まることを目指している。 実際にまちの保健室に参加された地域住民に、このフットケアを用いた介入を行い、自分の身体や健康に対する意識が変化するか調査を行った。参加者の多くは日ごろから血圧や体重を測定することで自分の身体の変化を気にしていた。しかし動脈硬化度や足の皮膚温、自分の足の変形や皮膚の状態などは見方が分からず、ほとんどの参加者が血圧や体重のように毎日気にかけていないことが分かった。また、できるだけ歩くようにしていたり、野菜を多く食べるなどできそうな食事の工夫を行うなどほとんどの参加者が経験上健康によいと思うことを取り入れて生活していることも明らかになった。 このことから、無症状で捉えにくい動脈硬化であっても、看護者が足を見る、手入れをする足を通して生活を考えるというアプローチを行うことで、自分の足だけでなく身体へ関心を向け、自分の身体を理解できると考えられた。また新たな療養を指示するのではなく、参加者の状況にあった取り入れやすい対処法を選択していけるようなアプローチによって動脈硬化の予防が可能となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は糖尿病患者の末梢動脈疾患(PAD)を予防する看護ケアを開発し、その効果を検証することを目的としている。PADは下肢に生じる動脈硬化であり、進行に伴い血管障害が生じると足病変から下肢切断につながることもある。しかしながらPADが無症候性に進行することから本人が病気の発症に気づいたり、早めに治療を受けることが難しい病態である。 パトリシアベナーらのケアリング理論をもとに、研究者の実務経験と先行研究をもとに「フットケアを通して下肢血管障害が生じやすい身体の理解を促すケア」の介入モデルの作成を行った。この介入モデルは、足を見られたり、ケアされる体験であるフットケアを用いており、「ケアされる体験の積み重ね」を重要な概念と位置づけた。足をケアされることで足への関心が高まり、足を通して生活を考えていくことで、足の関心が身体の関心に広がる。身体の関心が高まった患者は、自分の身体を理解できるようになり、自分のあった対処法を選択できることを目指している。介入モデルを日頃病院に受診する機会が少ない地域住民を対象に実施し、介入の効果を検討した。多くの対象者がフットケアの体験により気づいていなかった自分の足に関心を示したり、足の変化に気づくことで、以前より足に冷えがでている、最近は歩かなくなってきているなど自分の生活を考えられていた。また地域住民は今までの経験上健康によいと思う野菜を多く食べる、なるべく歩くなど多くの行動を取り入れていることが明らかになり、本介入モデルの可能性が示唆された。 当初は効果をPADの予防で検証するためにリスク因子の改善などの検査データの変化をデータとして収集することを予定していたが、まず介入モデルの検討を行うことが必要と考え予備調査を行ったため研究の進行がやや遅れた。次年度PADリスク因子の改善を検証していく。
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今後の研究の推進方策 |
予備調査により、作成した介入モデルによって、糖尿病患者の身体理解を促す効果があることは確認できたが、本研究の目的は作成した介入モデルにより、身体の理解が促された糖尿病患者のPADを予防できるかを検証することである。そのために、本介入を6ヶ月継続し、その効果をPADのリスク因子の改善で評価していくことが必要となる。 現在糖尿病専門医に研究内容、介入内容を説明し協力施設を選定、依頼中であるが、早急にデータ収集を開始していきたいと考えている。 また同時に本介入モデルが臨床現場で導入可能か検証するために、本介入モデルを地域の看護職を対象にワークショップを開催し、実践家の意見をもとにより介入モデルの洗練化を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 検証のための介入モデルの検討に時間を要したこと、また量的検証を行う前に、予備調査として介入モデルによる効果の検討を行ったため、本来予定していたデータ収集のための旅費及び分析ソフトの購入などが不要となったため。またたフットケア物品の消耗がすくなく消耗品の購入が低予算で済んだことで残金が生じた。 (使用計画) データ収集開始に伴うフットケア物品、分析ソフトの購入、データ収集旅費、研究成果発表のために予算を使用予定である。また看護職対象のワークショップ開催のためのプロジェクター等機器類の購入を予定している。
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