本研究は、糖尿病患者の末梢動脈疾患(PAD)を予防する看護ケアを開発し、その効果を検証することを目的としている。PADは下肢に生じる動脈硬化であり、進行に伴い血管障害が生じると足病変から下肢切断につながることもある。しかしながらPADが無症候性に進行することから本人が病気の発症に気づいたり、早めに治療を受けることが難しい病態である。 そこで昨年度は、パトリシアベナーらのケアリング理論をもとに作成した介入モデル「フットケアを通して下肢血管障害が生じやすい身体の理解を促すケア」を用いて、その効果の検討を行った。その結果生活習慣病を有していた地域住民は、足をケアされることで足への関心が高まり、足への関心が身体への関心へと広がることで自らの生活を振り返ることにつながり、本介入モデルの可能性が示唆された。しかし本介入では動脈硬化症を予防するために、自分の生活や身体を理解するだけでなく、自らが自分にあった対処法を選択していけることを目指している。 今年度は先行研究の結果をもとにケア介入枠組みを修正し、作成したケアを臨床家である看護師8名に実際に実践してもらい、ケアの実用性について検討を行った。臨床家の意見を参考に、ケア方法やケア物品などより実用的になるようにケアプロトコールを修正しケア枠組み、ケアプロトコールを完成することができた。 現在、2型糖尿病患者20名を対象に、修正し完成したケアモデル「下肢血管障害が生じやすい2型糖尿病患者への身体の理解を促すフットケア」を実施し、その効果として、セルフケア能力の向上、セルフケア行動の変化、身体の理解の深まり、PADリスク因子の改善がみられるか検討を行っている。介入までの準備、対象者の選定、倫理審査などに時間を要したため、介入研究の開始が計画より遅れることとなった。ケアの効果の検討については引き続き実施し、ケアプログラムの開発に取り組んでいく。
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