研究課題/領域番号 |
16K12038
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
西塔 依久美 東京医科大学, 医学部, 助教 (30761085)
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研究分担者 |
大川 宣容 高知県立大学, 看護学部, 教授 (10244774)
井上 正隆 高知県立大学, 看護学部, 講師 (60405537) [辞退]
奥寺 敬 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50252101)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 院内トリアージ / 救急外来 / トリアージ看護ケアモデル / 救急看護 / JTAS |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、緊急度判定支援システム(以下、JTAS)普及後のトリアージにおける看護ケアの明確化と看護ケアに至る思考過程を明らかにし、「トリアージ看護ケアモデル」の開発をすることである。 平成30年度は文献検討から見出した仮説を基に、臨床看護師のトリアージの実践を観察し、インタビュー調査を行った。 研究対象者は6施設、7名であった。研究対象者すべてがトリアージ実践経験3年以上のキャリアを持ち、7名中5名は救急看護認定看護師や特定看護師などその分野のエキスパートであった。2名は救急外来勤務経験が6年以上で、トリアージの実践だけでなく部署内でのトリアージ教育や指導に関わる人であった。 フィールド調査やインタビュー調査の結果、トリアージ前に受診理由(主訴)がわかっている場合、トリアージナースは主訴から疾患の仮説を形成し、第一印象による緊急度判断、自覚症状の確認、問診や他覚所見の確認、情報を統合した緊急度判断、待機場所の選定、人的資源の調整という思考でトリアージを行っていることが明らかとなった。トリアージ前に受診理由がわからない場合は、患者の第一印象から何かしらの疾患の仮説を立て患者に接触していることが明らかとなった。 トリアージナースが仮説を立てる際に想起する疾患は、致死性(危険性)の高いものからよくある疾患まで、およそ3~5つ程度を想起していた。問診のプロセスでは想起した疾患の中でもより早く除外したい疾患、もしくはより早く治療につなげなければならない疾患が特定できるような情報を聞き出しており、その思考に至る要因として、疫学的な情報や疾患特有の症状や所見といった知識だけでなく、看護師自身の経験から見出されたものがあった。トリアージナースの思考は座学で習得した単なる知識だけで成り立つのではなく、トリアージの経験から学習し、緊急度判断の思考が醸成されていくことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成29年度にフィールド調査とインタビュー調査を行う予定であったが、研究者自身が所属機関を異動し、所属機関の研究倫理審査に時間を要したことで、研究プロセスそのものに遅れが生じた。また、平成30年度の9月末までにフィールド調査とインタビュー調査を行う予定であったが、研究協力者が予定の数に満たず、平成31年3月末まで調査を延長し実施したため、さらに遅れが生じた。 研究計画の段階では研究協力者を8~10名としていたが、平成31年3月末の時点で研究の協力が得られたのは7名であり、研究協力者が予定の数に満たないことについて研究分担者に相談し助言を受け、7名の研究対象者で研究結果をまとめることになった。 次年度は研究分担者ならびにエキスパートパネルの助言をいただきながら、研究データを分析し結果をまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに実施したフィールド調査とインタビュー調査の結果を質的に分析し、トリアージにおける看護師の思考を明らかにするとともに、その思考に至る影響要因を明らかにする。また、トリアージにおける看護師の思考をもとにトリアージ看護ケアモデルの開発に着手する。トリアージの思考や影響要因を明らかにするプロセスやトリアージ看護ケアモデルの開発のプロセスにおいて、研究者自身のバイアスがかからないようにするために研究分担者のスーパーバイズを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究計画が遅れたため、平成30年度に使用する予定であった研究データ入力のための人件費や研究分担者やエキスパートパネルとの会議で使用する旅費が未使用であったため今回の差額が生じた。 (使用計画)研究データ入力のための人件費、研究分担者やエキスパートパネルとの会議で使用する旅費が必要である。また、データの分析や研究結果をまとめるにあたり、研究者自身のバイアスがかからないようにするため、質的研究法のセミナー参加や新たな知見を得るための書籍の購入、学術集会への参加を考えている。よって、平成30年度に使用しなかった資金は2019年度の研究活動の中で適切に使用していく予定である。
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