多くの若年性パーキンソン病患者に実施した10数年の研究をもとに、SEIQoL-DWの具体的方法や実施上の注意点なども含めて筆者の経験からの知見を整理する。 【QOLを高めるためのケアの方向性】①症状のコントロール、②家族の理解を得る、③社会との接点を維持する(・友人や患者会など他者との交流・生きがいや趣味、仕事がある)、④ナラティブの書き替えができる(・明るい、くじけない、前向き) 【実施上の課題と工夫】①5つのキューをどう引き出すか?(聞き方を変えたり、例を出したりする)、②5つのキューの領域、抽象度は?(家族、趣味、友人などどうまとめるか)、③初対面(初回面接時)にはあえて実施しない、④インデックス値は人と比べるのではなく、前回の本人のものと比べる、⑤値の変動の理由は、患者自らに語っていただく。 その中から、QOL維持の方策を共に考えることができる 【SEIQoL-DWのメリット】(1)簡便で、実用的である。面接し、すぐその場で評価できる。この方法の原法であるSEIQoL-JAでは、結果はより正確かもしれないが、その場ですぐには結果を出すことは出来ない。(2)前回(昨年以前)の結果とすぐに比較が出来、対象者とその場で値の変動の原因などを話し合うことができる。(3)対象者が毎回楽しみにしていてくれる。対象者とのコミュニケーションをより深めるトリガーとしてとても有効である。 以上のことをまとめてみると、SEIQoL-DWの聴取が対象者のより深い理解に繋がることは間違いない。場合によっては、現象学的な考察にも繋がっていけるかもしれない。また、この方法を用いたコミュニケーションそれ自体が、対象者のナラティブの書き換えに向けた「ケアリング」になっているとも考えられる。
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