研究課題/領域番号 |
16K12054
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
松田 千春 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 研究員 (40320650)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ALS / 口腔症状 / 人工呼吸器 / 口腔ケア / 神経難病 |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の臨床経過における口腔苦痛症状について、医学・歯学・工学の専門家と連携し原因を探索し、苦痛緩和のための看護ケアにつなげることが本研究の目的である。そのため、1.ALSの臨床経過と口腔症状に関する実態調査、2.ALSとALS以外の人工呼吸療養者の口腔症状の比較調査、3.機器を用いた口腔症状の定量的な評価の検討、を3年計画で行う予定である。初年度にあたる28年度は、以下の成果を得た。 1については、ALS在宅人工呼吸療養者7例の口腔症状に関する実態調査(1回/1~6ヵ月)を行った。重度な口腔苦痛症状として、流涎、咬舌、舌肥大、歯列偏位、開口障害等を認めた。重度な口腔症状を認めた症例では、随意筋の低下によるコミュニケーション障害があり、自覚症状を訴えることが極めて難しい状態にあった。さらに、口腔内の違和感や開口しにくさが増しても客観的に評価する指標は乏しく、さらに口腔内の診察、バイトブロックや口腔模型を作成するための十分な開口量がないため、定量的な評価を行うことで異常の早期発見につなげる必要性があること、診察やケアが可能な開口量を保つ必要性が示唆された。2については、先行研究および上述した当研究チームの研究結果の蓄積に基づき、調査項目を整理し、研究協力施設でのALSおよびALS以外の人工呼吸療養者の横断的な調査が速やかにできるように対象の選定、研究協力者との調整など準備を進めている。3については、ALS人工呼吸療養者2例に対して定量的な評価が可能な機器を検討した。本年度は気管カニューレを装着した重度な在宅ALS療養者の口腔関連症状を測定可能とする機器を明らかにできなかったため、2年目は課題を整理・分析し、今後の機器使用の基礎資料とする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、これまで殆ど研究がおこなわれてこなかった重度なALSの口腔苦痛症状を明らかにし、原因を探索することで看護ケアにつなげることである。研究計画は、1.ALSの臨床経過と口腔症状に関する実態調査、2.ALSとALS以外の人工呼吸療養者の口腔症状の比較調査、3.口腔症状の定量的な評価の検討、であり、1の成果としては、在宅ALS人工呼吸療養者を対象とした口腔苦痛症状を整理した。2については、1の結果に基づき、調査を実施するための必要な調査項目として整理した。現在、調査協力施設との調査実施のための手続き中であり、調査開始は当初予定していた時期より、やや遅れてはいるが、ほぼ計画どおりに進展することができている。3については、舌の体積や形態、開口量などを定量的に評価するための方法を検討した。しかし、ALSの重度化していく臨床経過に沿った口腔症状の変化に対応でき、定量的に評価可能な機器を明らかにするには至っていないため、2年目以降の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
ALSの特徴的な口腔症状を明らかにし、臨床経過に沿って分析することで口腔症状に影響を与える要因を検討し、看護ケアにつなげていくことを目的として、施設および在宅での実態調査を行っていく。特徴的なALSの口腔苦痛症状の一つである舌肥大をともなう咬舌については、咬舌予防のためのバイトブロックの作成や治療をうけやすいようするために、開口量を増大するための口腔リハビリテーションを行い、口腔内環境が悪化しないように看護ケアを行い、効果をみていくための定量的評価の実現化を進めていく。重度化していくALSの口腔症状の変化に対応できるに評価機器を明らかにするには至っていないため、評価困難となる身体および機器の特徴を整理することが今後の課題であり、そのためにも、口腔関連筋が比較的保たれている療養者の評価から、継続的に調査を実施していくことが必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、対象の身体的な状態や機器の金額等の条件が合わず、使用していく機器や器材を決定するに至らなかったため、29年度に必要とする予算として繰り越した。また、実態調査のための物品や、データ入力および機器を操作するためのパソコンを購入予定であったが、調査項目等を十分に検討してからとしたため、購入しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2年目にあたる29年度は、ALSの舌の厚みの評価のために、在宅で簡便に使用可能な超音波を購入予定である。また施設を対象とした実態調査を行う予定であり、調査のための物品、調査後の入力や人件費を必要とする。
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備考 |
公益財団法人東京都医学総合研究所ホームページ http://www.igakuken.or.jp/
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