本年度までに、3大機能障害を抱える直腸がん術後患者が機能障害を受け入れていくプロセス、および、直腸がん術後男性患者が行っている機能障害への対処内容を明らかにした。患者は排便障害、排尿障害、性機能障害という複合的な機能障害が相互に影響して日常生活に支障をきたし、自尊心へのダメージも負っていたが、機能障害の実態を理解し自分なりの対処方法を確立していた。そして、確立した対処方法の効果の程度や周囲のサポートによって、前向きな受け入れ、諦めによる受け入れという異なる2つの受け入れに至っていた。患者が実施していた対処方法は、≪Soilingの受け方の工夫≫≪Soiling・尿漏れが起こる前の排泄≫≪Soilingを改善させる運動》《Soilingのための行動制限≫≪肛門の荒れの予防≫≪いざという時のための準備≫≪薬物療法による症状抑制≫≪排便調整のための食生活の工夫≫≪気持ちを整える工夫≫≪生活習慣の改善≫であった。患者は、術後の生活の中で機能障害自体への対処だけでなく、付随する症状への対処や予防的対処行動をとり、メンタルヘルスマネジメントを行えていることもあった。重要視すべきことは、患者が心身ともに安定しない日常生活の中で、それぞれに合った対処を確立していなかなくてはならないことである。その支援を提供していくには、患者のレディネスを充分に把握した上での退院後の生活を想定することが重要となる。 介入モデルの作成に向けては、多くの患者に対応していくために、患者が独自で行っている対処方法について、さらにデータを収集していく必要がある。例えば、Soilingだけでも患者によって症状や受け止め方、対処方法などが様々である。エビデンスのある骨盤底筋運動だけでなく、関連する筋群のリハビリや薬剤、栄養管理など多職種による介入が必要と考える。多職種が実際に行っている加入についてもデータが必要である。
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