研究課題/領域番号 |
16K12083
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
森 莉那 愛知医科大学, 看護学部, 助教 (90620063)
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研究分担者 |
高橋 圭子 愛知医科大学, 看護学部, 教授 (50351151)
片山 清和 四日市大学, 経済学部, 准教授 (90387928)
室谷 健太 愛知医科大学, 医学部, 講師 (10626443)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん患者 / 成人期 / 外来化学療法 / セルフマネジメント |
研究実績の概要 |
平成28年度は,がんをもつ人々のセルフマネジメント支援に関する文献検討を中心に行い,プログラム構築に向けた示唆を得た。 [外来化学療法を受ける患者の現状と課題]近年のがんをもつ人の苦痛として薬物療法に伴う苦痛が一番多いことが示されており,なかでも大腸がん・肺がん・乳がんにおいて薬物療法に関連した悩みや負担が増加している。特に大腸がん患者の経験する症状や副作用,後遺症は,末梢神経障害や外見の変化,頻回の排便・頻回の便意,術後合併症・後遺症などが挙げられる。 外来で化学療法を受けながら生活している患者は,継続的にさまざまな身体症状を生じ,それらの症状によって日常生活や仕事,余暇にも支障を来している。特に就労中の患者は,化学療法に伴う身体症状や病気の進行,再発への不安を抱えながら仕事をすることに困難感を抱いている。社会生活を送りながら療養を続ける患者にとって,疾患や治療についての見通しがつかないことは困難さにつながることから,治療によって生じる副作用や日常生活の変化についての情報提供が必要であること,生活背景も考慮した個別的な支援が求められることが明らかとなった。 [外来化学療法を受ける患者への支援の実際]外来治療中のがん患者を対象とした国内外における看護介入の現状については,疾患や治療に関する知識の提供やセルフモニタリング,がんによるストレスやその対処といった精神面への働きかけが行われていた。しかしこれらの看護介入は,グループ介入がほとんどであり画一的な介入にとどまっていた。 [今後の課題]外来化学療法を受けるがん患者に対し,治療によって生じる副作用や日常生活の変化についての情報提供を含め,生活背景も考慮した個別的な支援を検討する。特に大腸がん患者にとってはプライバシーに関わる副作用症状を経験することから,これらをもちながら社会生活を送ることを支援する個別的な介入を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況は当初の予定より遅れている。その理由としては,文献検討に予想以上に時間を要したことである。がん患者を対象とした文献は多く存在し,それらを焦点化し,整理,分類することに時間を要した。 文献検討の結果から,化学療法を受ける大腸がん患者は多くの苦痛を抱いていることが明らかとなり,特に多様な社会的背景をもつ成人期のがん患者においては個別的な支援の重要性が示唆されたことから,大腸がんにおける「がん患者療養支援システム(仮称)」の内容の検討に取りかかっている。「がん患者療養支援システム(仮称)」では,大腸がん患者の経験している副作用症状(末梢神経障害や外見の変化,頻回の排便・頻回の便意,術後合併症・後遺症)に関する知識提供やその対処法などについてのプログラムを含むこととし,その内容の検討に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,外来化学療法を受ける大腸がん患者の療養上の困難への対処に関する要素を含む「がん患者療養支援システム(仮称)」の内容を具体的に検討していく。大腸がんに関する疾患および検査,治療法等の一般的知識については,がん情報サービスに掲載されている内容を取り入れ,プログラムを構築していく予定である。また,日々の体調のモニタリングにおいては,研究者らが作成した糖尿病患者用のweb版ソフトウェアのプログラムに準じて,大腸がん患者に必要とされるモニタリング項目を加えてプログラムを構築していくこととする。また本研究では,ICTを用いた介入に加え,対面でのプログラムも組み合わせて実施することを検討している。 「がん患者療養支援システム(仮称)」のプログラムの構築を6月末頃までに行い,その後プレテストを実施しシステムの実行可能性について検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況が当初の予定よりやや遅れていることにより,平成28年度に予定していたソフトウェアのプログラム開発やプレテストに係る費用が発生しなかったため,次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に予定していたソフトウェアのプログラム開発および,今年度サーバーの新規設置も検討しているため,これらに係る費用について助成金を使用する予定である。また,プログラム開発後にはプレテストを実施することとなるため,研究参加者へのプレゼンテーションや実施にあたり必要となる機器の購入に使用する予定である。
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