研究課題/領域番号 |
16K12097
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
アンガホッファ 司寿子 岩手県立大学, 看護学部, 講師 (30381304)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 既婚女性 / 妊孕性 / リプロダクティブライフプラン |
研究実績の概要 |
既婚女性が自身の妊娠する力である妊孕性をどのように認識し、また子どもを持つことに関する人生設計であるリプロダクティブライフプラン(RLP)についてどのような考えを抱いているかを明らかにする目的で、半構造的面接と質問紙調査を平行した探索的デザインでの研究を進めている。 質的調査では、スノーボールサンプリングにて面接をした研究参加者4名からのデータの分析を進め、今後の調査の方向性を検討した。面接で得られた結果として、対象の既婚女性達は全員、出産後も就業継続を希望しており、また自身のキャリアと、出産・子育ての折り合いを重視していた。子どもを持つことに対する夫や家族からのプレッシャーについては、それぞれの女性で多様であった。家族からの挙児の期待を負担に感じているケースや、家の跡取りという重圧を感じているケースがあった。自身の妊孕性については、年齢・健康を意識した発言があったが、知識不足が否めない実態があった。子どもを持つのに適した年齢より自分が遅れがちであると考える言葉もあった。これらのことから、今後の面接においても、キャリアと妊娠・子育ての折り合いを強く意識している女性の心理に目を向けるとともに、夫や家族の影響は女性それぞれで異なる点、また妊孕性の知識や認識についても個人差があることを考慮した調査が求められる。 量的調査においては、28年度は質問紙の作成を行った。海外の先行文献を基にして概念図を作成し、それぞれの概念に沿って質問項目の検討を重ねた。質問項目の内容は、面接結果も参考にし、希望する生殖のプラン、妊孕性に関する知識、キャリアデザイン、社会的環境や文化的背景、夫婦の関係性等で、尺度を活用して構成した。28年度は質問紙の作成に留まったが、29年度には調査を実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
28年度の計画は、既婚女性の自身の妊孕性の認識とリプロダクティブライフプラン(RLP)の明確化であった。研究デザインとして、Mixed Method Research(混合研究法)を用いて、質的調査と量的調査の完了を目指したが、質的調査については4名の面接内容の検討に留まり、量的調査については質問紙作成までに留まった。文献検討をして概念図の作成に至ったことや29年度も継続して行う調査の方向性が得られたことは成果であったが、当初の計画に比較するとやや遅れている状況であるため。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、まずは28年度に完成した質問紙による調査を実施する。対象者は、将来子どもを持つことを希望する、30代の仕事を持つ既婚女性500名とする。現在妊娠している女性や婦人科疾患既往のある女性は除外する。対象者の選定においては、質的調査を基に、自身の生殖のプランとの折り合いが最も求められると考えた30代に焦点をあてた。30代の有職既婚女性は、女性の妊孕性が低下し始めるターニングポイントの前後にあることから、リプロダクティブヘルスとキャリア、そして夫婦の将来の家族観など、そのバランスと折り合いをつけることが迫られる対象である。調査はウェブによる調査を実施し、地域による偏りを避ける。得られたデータは、統計学的手法を用いて、探索的分析および確証的分析を行う。また、平行して質的調査をすすめ、より深い女性のリプロダクティブライフプラン(RLP)の明確化をはかる。 調査によって得られた成果をふまえ、専門家(市町村保健師、ファミリーフレンドリー企業の福利厚生担当者、助産師)および当事者による会議を開催する。会議で意見交換を行い、既婚女性を対象とした健康教育プログラムの骨子を構築する。内容は、①妊孕性に関する知識、②リプロダクティブライフプラン(RLP)に関する選択肢の例、それらに必要な知識の提供、③グループワーク(知識の学びを深める)で構成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
量的調査において、28年度内に実施できなかったウェブ調査を29年度に計画しており、業者委託費、生物学統計者謝礼、資料・データ整理謝金等が次年度使用額として生じた。 28年度内に計画していたアイルランドでの研究成果発表が実行できなかったため、研究成果発表のための学会参加が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ウェブ調査の業者委託、生物学的統計者の研究協力に対する謝礼、資料・データ整理謝金等での使用を計画している。データ収集後の分析に係る研究打ち合わせの回数が増加することが予測され、旅費の使用を計画している。研究成果発表として、3月の日本助産学会学術集会における発表のため、国内旅費の使用を計画している。 質的調査・量的調査で得られた結果を基に、健康教育プログラム検討協力者(専門家および当事者)との検討会に係る謝礼等の使用を計画している。またデータ分析や健康教育プログラム検討会で必要となる文献や物品の購入を計画している。
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