母体・胎児集中治療室(MFICU)に必要な看護の質の向上を目指し,これまで必要な能力・研修会および管理上の困難について研究を重ねてきた。今回の研究では,引き続きデルファイ法2回目の調査により,教育内容の体系化を試み,一定の枠組みを作成した。 また, MFICUで最も対応頻度の高い切迫早産妊婦を題材に精神的支援や家族支援,倫理調整を考える研修会を開催し,その効果を確認した。特に,本研究では研修会の実用化を目的としていたため,研究者以外が開催しても効果が得られるような方略を考案した。そのため,動画教材の作成と研修会ファシリテータを養成した。作成した動画教材を用いて,研究者らが開催した研修会では一定の効果が認められた。加えて,現在MFICUで勤務する看護職者の意見をふまえ,各施設で実施しやすいよう時間短縮プログラムに修正した。短縮プログラムを養成したファシリテータにより研修会を2施設で実施し,同様の効果が認められた。これは,教材を動画にしたことで,参加者は短縮版プログラムの際も文字データだけでは得られない情報を事前に確認することができ,プログラムの効果が維持されたと考えられる。ファシリテータも動画教材があることや,ファシリテータ養成の過程で研究者が実施した研修会にオブザーバー参加もしたことから,研修会開催のイメージ化ができ,自施設での研修会を円滑に開催できていた。以上より,立案した短縮版プログラムは,研究者以外のファシリテータが運営でき,病棟内研修でも実施できることから,多くの施設で取り入れやすい実用的なプログラムであると考える。 このプログラムを実施するセミナーの開催施設を募集し,さらに他施設でも効果を確認する計画であったが,コロナ禍等の影響により協力施設が確保できなかったため,2020年度成果を発表することに努め,学術集会での発表と学会誌への投稿を行った。
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