研究課題/領域番号 |
16K12114
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
岡本 美和子 日本体育大学, 児童スポーツ教育学部, 教授 (70435262)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乳幼児揺さぶられ症候群 / 泣き / 産褥期 / レジリエンス / 初産婦 |
研究実績の概要 |
乳幼児揺さぶられ症候群予防に向けSBSへの追い込み要因を明らかにするため、28年度は探索的研究の一環として質的調査を実施した。研究目的は、産褥期における初産婦のレジリエンスの働きを児の泣きと母親の心身の回復に着目しながら、質的研究により明らかにすることである。対象者は、調査施設で開講する育児学級に参加し、研究協力の同意が得られた初産婦7名である。レジリエンス構成要因を参考にしたインタビューガイドを基に半構造化面接を実施した。分析方法では、内容分析の手法でコード化、サブカテゴリー化、カテゴリー化を行い、カテゴリー間の同質性や違いについて、質的研究の専門家と共に検討した。研究の結果、産後1ヵ月頃までは対象者全員がパートナー以外の家族の支援を得ることができていた。児の泣きと疲労の振り返りでは、1ヵ月健診を境に泣きの量が落ち着く、または増強する等、全員が情緒的動揺に関連する泣きを経験していた。また、疲労についても泣きの量に呼応するようその増減が見られた。 インタビューデータを内容分析した結果、41コード、12サブカテゴリー、4カテゴリーが抽出された。明らかになったカテゴリーは、「周囲からの理解と支援」「豊かなストレス対処能力」「高まる育児力」「向上する適応力」であった。 産後1ヵ月半頃は、身体的回復を実感しており、精神的余裕も生まれ、心身のセルフケア能力の高まる時期でもある。しかし、母親の疲労感と児の泣きには連動性がみられることから、児の泣きの状態を加味しながら母親への疲労対策を吟味していく必要性が認められた。また、心身の疲労の軽減には、自分を理解してくれる、気持ちを察してくれる等精神的に継続した支援者の必要性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画では、妊娠、分娩、出産後において特に重篤な問題がなく経過した初産婦を対象に、半構造化面接法にてインタビューを実施、SBSへの追い込み要因となる母親の疲労感や情緒的動揺(Frustration)について特徴を明らかにすることを予定していた。疲労感は、疲労のメカニズムを参考に肉体的、精神的、神経的疲労を日常の子育て生活音の側面から状況を尋ね、連動すると考えられる不安感や苛立ち感を自由に話してもらった。 今後は、質的内容分析の結果を受け、初産婦である母親の、疲労感や情緒的動揺(Frustration)と社会的背景要因の関連について項目内容を抽出し、今後作成する予定のSBS予防のための介入ツールの資料とすることである。 以上のことから28年度の研究においては、当初の予定通り研究内容に沿った調査を遂行することができたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に実施した調査研究の結果を基に、児の泣きに連動して増減する疲労感や情緒的動揺(Frustration)との間に関連が認められた社会的背景内容について、先行研究や社会的資源を検討、地域子育て支援者の協力を得るなどして、疲労感や情緒的動揺(Frustration)の軽減に向けた対応策を吟味した後、SBS予防教材として小冊子を作成する予定である。 作成に当たっては、読みやすさ、見やすさ、活用のしやすさを重視する。また、初産婦のSBS予防への意識変容に関して説得力のある教材を意識するとともに、必要に応じ副読本としてミニ冊子を作成することも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
乳幼児揺さぶられ症候群予防に向けた介入研究を実施するため、介入ツールである小冊子を平成29年度に作成する。その予備段階として平成28年度中に小冊子のデザイン画を専門業者に依頼する予定であった。しかし、デザイン業者からの打ち合わせ期日が平成29年4月となったため、その費用が次年度使用金額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度4月から、デザイン専門家との打ち合わせを実施しており、次年度使用金額を順調に使用している状況である。
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