研究課題/領域番号 |
16K12114
|
研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
岡本 美和子 日本体育大学, 児童スポーツ教育学部, 教授 (70435262)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 乳幼児揺さぶられ症候群 / 泣き / 産褥期 / Frustration / 疲労 / 初産婦 |
研究実績の概要 |
乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome以下SBS)の予防に向け、直接的誘発要因と言われる子どもの泣きへの対応のみならず、SBSへの間接的要因と考えられる追い込み要因を解明するとともに、その予防プログラムを開発することが本研究の目的である。 28年度に行った質的調査により、SBSへの追い込み要因と言われている疲労とFrustrationへの対応には、パートナーを含む身近な支援者による、自分を理解してくれる、気持ちを察してくれる状況の中で、十分な心身の疲労回復のための対応プログラムの必要性が認められた。 29年度はさらに質的調査を重ね産褥期にある女性11名に半構造化面接を実施した。その結果、産褥期における心身の疲労の原因には、28年度の結果と共にスマートフォンの長時間使用が少なからず影響していることが確認できた。一日の使用時間の平均は147分(30分~8時間)で、育児に積極的に利用している積極派が5名、スマホがなければ疲れず睡眠が取れるのについ使用してしまうという葛藤派が3名、スマホより自分の体調が優先の適度派が3名であった。使用にあたっては育児のための便利なツール、育児情報の活用以外に日々の心のよりどころとする依存的側面もあり、利用方法に対する看護的介入の必要性が確認できた。 また、上記の質的調査で明らかになった内容をさらに母性看護学及び臨床現場の助産師らと協議し、産褥期の心身の回復と安定を目指した指導教材「emitas -あなたの産褥期をほほ笑みで満たす小さなヒント集」を開発した。本教材では、快適産後の6つのメソッドとして①休息の勧め、②楽食の勧め、③スマホ使用のセーブ、④パートナーからの支援(間接育児と直接育児について)、⑤ストレス発散の仕方、⑥他者からの支援獲得に関する情報等を産褥期にある調査対象者に提供する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画では、産褥期にある初産婦11名に対し子どもの泣きに伴う情緒的動揺、日々の疲労感やFrustrationの実態について質的調査により丁寧に明らかにするとともに、母親の置かれている社会的背景を十分に探索することであった。その結果、子どもの泣きが落ち着く、または増強する等の泣きに変化はあるものの対象者全員が泣きに伴う情緒的動揺を経験していることが分かった。母親の疲労に関しては泣きの量に連動はしているものの、「周囲からの理解と支援」「豊かなストレス対処能力」「高まる育児力」「向上する適応力」が認められた。その背景には、産褥期にある初産婦のレジリエンスの働きが心身の回復に影響を与えていること、疲労には子どもの泣きの変化や身近な支援の獲得、そしてスマートフォンの使用状況が関連項目として確認することができた。 そこで、本年度は上記関連項目に考慮しながら、産褥期の心身の回復と向上、安定を目指した指導教材「emitas -あなたの産褥期をほほ笑みで満たす小さなヒント集」を開発した。今後は、SBS予防プログラムとしての指導ツールである「乳幼児揺さぶられ症候群予防Book」と「emitas -あなたの産褥期をほほ笑みで満たす小さなヒント集」併用の効果を検証するため、産褥期の初産婦を対象に介入研究を実施する予定である。 現在は医療機関での介入研究に向け、調査実施施設の倫理委員会に研究計画書及び申請書を提出中である。倫理審査の結果を受け、その後調査を実施する予定であり、実施に向けて準備中である。以上のことから、29年度の研究は当初の予定通り研究計画書に沿っておおむね遂行していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
現在申請している調査実施施設での倫理審査を受けて後、、SBS予防に向けた「乳幼児揺さぶられ症候群予防Book」と産褥期の心身の回復と安定を目指した「emitas -あなたの産褥期をほほ笑みで満たす小さなヒント集」の両指導教材併用の効果を検証するため、産褥期にある初産婦を対象に介入研究を実施する予定である。 方法は準実験研究で、SBS及び泣きへの対処行動に関する知識、疲労とFrustrationへ効果を統計学的に分析し介入効果を検証する。 調査対象者は、調査実施施設で正期産で単胎児を出産した初産婦とする。出産後病棟で実施される退院指導に参加した初産婦に対し口頭で調査の趣旨、内容を説明し調査協力を依頼する。協力が得られた対象者には、出産後4~5週と8~9週の2回、郵送法による質問紙調査を行う。回答は無記名で同封した返信用封筒で郵送にて回収する。対象は各群70人で、データ収集期間の前半を対照群、後半を介入群とする。 介入方法は、対照群には通常の退院指導を実施、介入群では通常の退院指導後にSBS予防プログラムの簡略な説明と共に「乳幼児揺さぶられ症候群予防Book」と「emitas -あなたの産褥期をほほ笑みで満たす小さなヒント集」の両指導教材を本人とパートナー用を手渡しする。その際、パートナーと共に教材を閲覧するよう依頼する。介入効果の評価には、質問紙法を取り入れる。評価の項目は、現在の生活状況6項目、児の泣きと対処行動13項目、SBSに関する知識4項目、POMS2(短縮版)35項目の計58項目とする。分析方法は、基礎情報の群間比較はT検定及びχ2乗検定、多重比較にはTukey法を使用する。
|