本研究の目的は、乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrom以下SBS)の予防に向け、直接的誘発要因とされる子どもの泣きへの対処法とともに、苛立ちや疲労への追い込み要因を解明し、その内容を包含したSBS予防プログラムを開発することである。28年度には、出産後の初産婦を対象に質的調査を実施し追い込み要因と関連項目を抽出した。また29年度には、追い込み要因を参考に、産褥期の心身の回復と安定を目指した指導教材「emitas-あなたの産褥期をほほ笑みで満たす小さなヒント集」を作成した。本教材は快適産後の6つのメソッドとして、①休息の勧め、②楽食の勧め、③スマホ使用のセーブ、④パートナーからの支援、⑤ストレス発散の仕方、⑥他者からの支援獲得、の内容で構成されている。 30年度は、SBS予防冊子導入による介入効果の検証を行った。先に対照群が通常の退院指導を受講、その後介入群では通常の退院指導の後、SBS予防冊子を母親に渡し読んでもらい、パートナーにも同様の冊子を渡し読んで貰うよう設定した。また出産後1ヵ月頃を目途に予防プログラムの効果を測るための質問紙を両群の自宅宛てに郵送、記載後無記名にて返送してもらった。 その結果、研究対象者数は対照群18名、介入群は10名であり両群の特性には有意差はみられなかった。SBSに関する知識では生後3ヵ月頃までの子どもの泣きの特徴、泣かれて苛立った際に自身を落ち着かせることの重要性と方法については介入群が有意に高値を示した。また、最近の気分ではPOMSの「怒り-敵意」、「抑うつ-落ち込み」が介入群で有意に低値を示し、「友好」では介入群で有意に高値を示した。「疲労-無気力」の平均値は介入群が対照群より低値を示したが、有意差は認められなかった。対象数は少ないものの、追い込み要因として考えられる苛立ち等への介入効果が認められる結果となった。
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