研究課題/領域番号 |
16K12119
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
西原 みゆき 日本福祉大学, 看護学部, 助教 (40582606)
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研究分担者 |
山崎 喜比古 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (10174666)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 逆境下成長 / 重症心身障がい児者 / 母親 |
研究実績の概要 |
本研究では、重症心身障がい児者を養育する母親の人生に生じる変化やニーズのトータル的な把握を行い、母親が「支援者」としてだけではなく、「自分自身の人生を生きられる」ように、ライフスパンを通しての方策を構築することをめざしている。 平成28年度は、重症心身障がい児者家族の主観的生活経験と社会環境に関して、現状把握のため先行研究のレビューを行った。調査研究としては、養育過程における母親のこころの状態の変化と影響要因を抽出する目的で、協力の得られた17歳以上の重症心身障がい児者を養育する母親10名に対して半構造化面接調査を行った。面接内容は、調査時にライフ・ライン・メソッドを用いて子どもの誕生から現在までのこころの状態をラインで描いて頂き、そのラインの変化の理由を尋ね、どのようなイベントが母親の心理に影響を与えてきたかを捉えた。 現在、面接調査のデータ分析を進めている。高等部卒業前後の17~20歳の重症児者をもつ母親3例の分析結果では、3名の母親のライフ・ライン上昇、下降、停滞において経験されているイベントの共通点が明らかになった。 母親のこころの状態は、子どもの発達段階の移行期に障がいによる生活への影響や制限が経験されたとき、また、学校への期待を失ったときにライフ・ラインの低下、停滞をもたらしていた。一方、様々な困難を経験しながらも、支援に乏しい社会の現実を突き詰められることで、母親の覚悟が強まり支援環境の充実した社会に向けた重症児者の親の役割を果たしていこうとする決意につながっていった。特に、重症児者の発達段階における移行期への支援強化の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、先行研究からのレビューで明らかになった母親と重症心身障がい児者の生活における課題を参考に面接調査を行い、養育過程における母親の人生に生じる変化やニーズを具体的に捉え、母親の人生に影響を与える要因を抽出する事が目的であった。 面接を実施するにあたり、本研究への理解が得られ面接調査は順調に進めることができた。 しかし、面接調査におけるデータ分析に時間を要している。今回、面接手法として、ライフ・ライン・メソッドを用いた。分析方法は、1人1人のライフ・ラインと母親の語りを忠実に照合しながら分析を進めているため時間を要している。以上が、研究がやや遅れている原因である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度実施した面接調査の分析を終了し、その分析結果から、母親の人生の変化に影響を与えたイベント、要因を踏まえ、質問紙調査を行う。 質問紙調査の目的は、重症心身障がい児者を養育する母親の人生立て直しの成否を左右する力や対処資源、支援環境について定量的に把握することにある。具体的には、逆境下成長を示す概念PPC(Perceived Positive Change)とストレス対処健康保持力概念(Sense of Coherence;SOC)、ソーシャル・キャピタルとの関連から、子どものライフステージごとに、母親がどのような経験をされたり、どのような社会環境にあることが人生に影響を与えるのかを明らかにし、支援示唆を得る。質問紙作成においては、共同研究者、協力の得られた親の会の母親と調査項目を確認し、決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、先行文献レビュー、面接調査実施を中心に行い学会発表に至らなかったため、旅費が予定より少なかったことが全額予算執行できなかった要因である。
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次年度使用額の使用計画 |
面接調査における分析結果を8月に関連学会で発表する予定である。その他、関連学会(東北地区)に参加し知見を広げるため、旅費が必要となる。 また、今年度は第2段階での質問紙調査(1000名程度)を進めていく。質問紙調査に関わる費用として、調査用尺度購入、質問紙印刷費、質問紙回収のための通信費、データ分析用ソフト購入費、データ入力費として、使用予定である。
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