研究課題/領域番号 |
16K12134
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
佐藤 幸子 山形大学, 医学部, 教授 (30299789)
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研究分担者 |
今田 志保 (佐藤志保) 山形大学, 医学部, 助教 (00512617)
遠藤 芳子 岩手保健医療大学, 看護学部, 教授 (20299788)
塩飽 仁 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50250808)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心身症・神経症 / 学校 / 対人関係形成 / ソーシャルスキルトレーニング |
研究実績の概要 |
心身症・神経症児は情動調整や自己表現が未熟であることが明らかになっており,この情動調整や自己表現の能力を高めるために,ストレスの認知や自己の知覚,コミュニケーションスキルのトレーニングが不可欠であることから,ソーシャルスキルトレーニング(SST)が有効であると考えられている。 前年度は,心身症・神経症児の学校や仲間集団における対人関係に関する困難と感じる「症状や受診に関連した学校場面」に対する対応方法を考え出すために,子供の対応に熟練した学校教員4名や養護教諭3名,及び小児科病棟で経験のある看護師6名を対象にインタビュー調査を実施した。その結果,SSTのツール作成に当たっては,話し合いをもって,患児が病気を理解でき,どのように友達に説明したいかをステップを踏んで確認できるようなSSTのツールを作成することが重要であることが示唆された。 そこで今年度は前年度の結果を踏まえ,子供と医療者・教育者が共有して使用するソーシャルスキルトレーニングのための冊子(素案)を作成した。昨年度の調査結果から,冊子作成のためのポイントを整理し,冊子のストーリーを示す13のステップを明確化した。そのステップにそって,研究者間で話し合いながら認知行動療法を踏まえた素案を作成した。次に,作成した素案の妥当性や活用性について検討することを目的に,小児科病棟に勤務する看護師,小学校の教諭,養護教諭10名程度を対象に,素案を実際に見てもらい,聞き取りによる質問紙調査を実施した。現在は調査を終了し,素案の修正点について検討中である。 前年度の結果は,日本発達心理学会第30回大会において発表し,現在投稿論文を執筆中である。冊子作成のためのステップについては,次年度の学会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度から3年度までの計画は,①心身症・神経症児の学校や仲間集団における対人関係に関する困難な場面を抽出し,心身症・神経症児用のSSTの想定場面を明確化する②心身症・神経症児のためのソーシャルスキルトレーニング場面および対処方法を検討し,SSTに必要なツールの素案を作成する③心身症・神経症児のためのソーシャルスキルトレーニングツール(素案)の妥当性や活用性について子供の心のケアに関わっている看護師や保健師・養護教諭に調査を実施することであった。 初年度は子どもと家族の相談記録から子どもが困難に感じる場面を抽出し,特に「症状や受診に関連した学校場面」に対するSSTのツールの必要性を明らかにした。2年目に対応方法について検討し,心身症・神経症児が困難と感じる「症状や受診に関連した学校場面」への対応方法として,家族や子どもと相談し,子どもの心を支えながら対応方法を予め考えておくことが必要であり,一律な内容ではなく一人ひとりに適した方法を考えることが重要である。また,クラスメートの力を引き出したり,家族や教員同士の協力体制を構築することも重要であることを明らかにした。今年度は明確化された対応方法をもとに,SSTに必要なステップを明確化し,素案の作成を行った。その後その妥当性と活用性について調査を実施し,現在,その結果を分析中である。 3年次までの研究成果をもとに最終年度はツールを完成させることができる段階まで達している。 これらのことから,研究計画はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては以下のとおりである。 現在作成中の素案について,調査結果をもとに研究者及び研究協力者間で検討し,修正を行う。次に同意の得られた患児と家族に対して修正されたツールを用いてSSTを実施し,さらにツールに改善点を加え,最終版とする。完成した冊子の使い方を示すガイドを作成する。完成版を公表し,関係機関に送付する。 当初は,動画によるソーシャルスキルトレーニングツールを作成する予定であったが,子ども自身の理解と意思を尊重したツールとすることが重要な点を鑑み,家族や医療者とともに完成させていく作業をしやすいガイドブックという形をとることにとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は海外において成果発表を実施できなかったために次年度使用額が生じた。この次年度使用額は次年度分として請求した助成金と合わせて,成果発表や関連機関への成果物の送付等に使用する予定である。
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