最終年度は、前年度までに得られた知見をもとに、周産期の非医療的支援のトレーニング方法を開発し、実施をおこなった。前年度に、ケアの受け手あるいは支援者が、妊娠中・出産中・産後のかかわりで困難を感じた事例を集めたところ、67名より97件の事例が集まった。これらを時期(妊娠期15%・分娩期34%・産褥期24%・授乳15%・全期13%)と、コクランレビューにより抽出された4タイプのドゥーラ要素(情報提供、アドボカシー、実質的、情緒的)に分類して分析した。さらに、各事例をもとにしたロールプレイ教材を作成した。2019年7月~2020年1月の期間に国内で5回、国外(モンゴル)で2回のトレーニングを実施した。 ドゥーラサポートは、その効果が強力なエビデンスによって保証されている割に、費用や収入の問題、産科に非医療職のドゥーラが入りにくい現状、日本でのドゥーラの実例が少ないため関心はあっても導入を躊躇してしまうことなどが原因で、実社会で普及しにくい現状である。この解決策として本研究の結果、ドゥーラを概念として広めることを強調するという結論に至った。「誰でもドゥーラになれる」という前提で普及する方針は国際的にも新しく、「ドゥーラ的な人」が社会に増えやすくなることは社会的意義が大きい。本研究で開発したトレーニングでは、経験や知識を問わず誰でも参加できる。ドゥーラトレーニングのロールプレイとは産科ケアの現場を「疑似演技」するもので、失敗しても妊産婦さんを傷つけることのない安全な場所で、妊産婦や家族、医療者など、それぞれの役になって演じ、演じた時の気持ちや行為の理由をふり返るものである。今後、チャイルドリサーチネット内「ドゥーラ研究室」のTRAINING編などで実施報告を公表する。
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