助産師の経験知を可視化するために分娩進行を判断する観察項目を作成した.本研究の目的は,自然経過の産婦の分娩経過を観察し,観察項目と内診所見の関係から妥当性を検討することである.観察項目は,産痛は表情,からだの緊張,痛みの部位について,各々3項目,3項目,5項目で全11項目,娩出力は発汗,いきみで構成し,各2項目ずつで全4項目,産道と娩出物は各2項目ずつで全4項目であり,観察項目は19項目とした.これらを用いて,妊娠36週以降の経腟分娩を予定する産婦を対象に,児娩出までの分娩経過中に19項目の出現時期,分娩進行中の内診所見,観察項目確認時と内診時の陣痛周期をデータとした.デモグラフィックスデータは診療録から情報を得た.得られたデータは,陣痛開始から児娩出までの所要時間を基準に,各観察項目を確認した時間の割合を算出した分娩進行度,観察時の陣痛周期を秒換算し,観察項目,子宮口開大,先進部の下降度の分娩進行度と陣痛周期を分析データとした.観察項目と開大,下降度との関係は,分娩進行度と陣痛周期の各々のSpearmanの順位相関係数を算出した(有意水準0.05,相関係数0.4以上を相関あり).本研究は,都留市立病院研究倫理委員会の承認(承認番号2020-02)後,対象者には書面による同意を得て実施した.自然経過で経腟分娩であった初産婦45名,経産婦46名を分析対象とした.陣痛開始による入院は,初産婦27名,経産婦35名,入院時の開大の最頻値は,初産婦,経産婦とも4cmであった.初産婦では,観察項目19項目のうち開大と下降度の両者とも相関を認めなかったのは,「顔をしかめる」「腰部痛」「血性分泌物が出始める」「多量の血性分泌分」の4項目であった.経産婦では,「発作時に全身に力が入る」の1項目であった.相関係数0.7以上の強い相関を認めた項目は,初産婦では3項目,経産婦では7項目であった。
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