研究課題/領域番号 |
16K12171
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
伊藤 奈津子 淑徳大学, 看護栄養学部, 助教 (00340117)
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研究分担者 |
鈴木 恵理子 淑徳大学, 看護栄養学部, 教授 (20249246) [辞退]
小川 純子 淑徳大学, 看護栄養学部, 准教授 (30344972)
徳永 聖子 清和大学短期大学部, その他部局等, 講師(移行) (30761663)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レジリエンス / 泣き / 育児支援 / 育児ストレス / 育児不安 / 母親 |
研究実績の概要 |
本研究は乳児期の子どもを育てる母親の「泣き」に対するレジリエンスを向上させるためのプログラムを構築するということが最終的な目的になる。平成28年度は、その第1段階として、心理・社会・教育・医療と幅広い分野で研究がなされている「レジリエンス」についての概念を整理するための文献検討を実施した。結果は、平成29年度に発表する予定であるが、概要のみ報告する。 Masten,Best,&Garmezyによる定義では、困難で驚異的な状況にも関わらず得られる望ましい結果やその結果が得られる過程、あるいはその過程を支える許容力や結果とされており、Garmezy(1991)は、再生に向けての足がかりに向けての跳ね返りの性癖や再生に向けての力としていた。その他にも、Werner(1993)Luthar,Cicchetti,&Becker,(2000)、Grotberg,(2003)などが定義を行っている。本邦では、石毛・無藤(2005)小塩・中谷・金子・長峰(2002)が非常にストレスフルな出来事を経験したり、困難な状況になっても精神的健康や社会的適応行動を維持する、あるいは回復する心理的特性と定義していた。 いずれにせよ、レジリエンスは誰もが持っている心理的特性であり、個人と環境との相互作用や発達過程における発達課題と相互作用して、社会的な適応を説明する概念として用いられていた。どの年代の人でも延ばすことができ、その経験を自己の糧として受け入れる状態に導く特性で、個人の潜在的な回復性が注目されており、文化的地理的差異は極めて少なく、誰もが備えているものであるとされていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度においては、「レジリエンス」の概念が予想以上に分散されており、文献の収集に時間を要してしまったため、課題の一つであった「泣き」に関するデータの収集まで至らなかった。平成29年度においては、「泣き」のデータ収集と同時進行で、母親にインタビュー調査を行いスピードを上げて研究に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
レジリエンスに関する文献検討の結果から、レジリエンスは個人の心理的特性を表しており、特異的な何かの出来事に対するものではないという結論を得た。そのため、乳児期の子どもの「泣き」に対するレジリエンスを向上させることにより、育児期全般における育児関連ストレスに対するレジリエンスも向上させることができる可能性もあることを視野に入れて、平成29年度以降の研究を行っていく。 平成29年度以降は、親にとって子どもの「泣き」のどのような因子がストレスになりやすいのかを検討するためにも「泣き」に関する実態調査・研究を開始する。データとしては5人程度の母子に協力を依頼し、生後1-2か月、3-4か月、5-6か月の子どもの「泣き」に関する調査と同時に母親へのインタビュー調査を行い、育児期の母親のリアリティショックと泣きに対する思いを縦断的に実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は本研究の開始年度であり、業務との調整などで本研究にかけるエフォートが不足してしまったことが研究の進度を妨げた要因として挙げられる。またレジリエンスの定義が非常に幅広く文献収集・分析に予想以上に時間を要した。これらの結果により、本格的な「泣き」に関するデータの収集まで研究が進行しなかったため、使用金額の変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究では、最終的に乳児期の子どもを育てる母親の泣きに対するレジリエンスを向上させるためのプログラムの構築を目指している。可能であれば、プログラムの一環に携帯アプリケーションのような汎用性が高いものを挿入しレジリエンスの向上を目指すプログラムを検討している。そのアプリケーションの開発、制作にある程度のまとまった金額が必要となるため、可能な限りデータの収集や分析などにかける費用を減額して5か年計画のうち最後の2年間に金額をスライドしたいと考えている。
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