高齢化に伴い、在宅でインスリン注射や内服薬などの薬物療法のセルフケアが必要な高齢慢性疾患患者が増加している。高齢者は、複数の慢性疾患に罹患している場合が多く、薬剤も複数に及んでおり継続的な薬物療法のセルフケアの難しさが想定される。そのため、本研究では服薬アドヒアランス※に着目し、在宅高齢者の薬物療法のセルフケアの実態および薬物療法のセルフケアを阻害したり促進したりする要因について明らかにし、支援や改善を図るための有用な情報を提供することを目的とした。平成30年度には、在宅高齢者で、65歳以上の慢性疾患を持ち継続的な服薬をしている者を対象とした質問紙調査を実施し、在宅高齢者の服薬アドヒアランスとヘルスリテラシー、医師とのコミュニケーションに着目し、その関連性について明らかにすることができた。在宅高齢者の服薬アドヒアランスの高さには、ヘルスリテラシーのうち、機能的ヘルスリテラシー、伝達的ヘルスリテラシーが有意に関連していた。また、医師とのコミュニケーションの良好さとも有意な関連がみられた。 以上より、在宅高齢者の服薬アドヒアランスは、ヘルスリテラシーの中でも基本的な読み書き能力の他に、情報の入手や理解、伝達という能力の高さと関連がみられた。さらに、医師と良好なコミュニケーションがとれるという関係性も大きく関連していることが明らかになった。今後の在宅高齢者の薬物療法のセルフケアの支援においては、上記のことを意識して関わっていくことが必要であることが示唆された。 最終年度である平成31年度は、上記分析結果などの研究の成果について、学会での発表を行った。また、現在英語論文を投稿中である。
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