研究課題/領域番号 |
16K12191
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
谷口 好美 金沢大学, 保健学系, 准教授 (50280988)
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研究分担者 |
水野 真希 日本赤十字看護大学, 看護学部, 講師 (60547181) [辞退]
野上 睦美 金城大学, 看護学部, 講師 (20584353)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高齢者ケア / 専門職QOL / 共感疲労 / 共感満足 / 看護職 / 介護職 / 老年看護 |
研究実績の概要 |
共感疲労(Compassion Fatigue)はProfessional QOL(Stamm,2009)の主要概念の一つであり、対人サービス等、感情労働を行う専門職の健康を脅かすことが報告されている。本研究の目的は,Professional QOLの概念モデルを基盤とし,高齢者ケア施設に勤務する看護・介護職に特有な専門職QOLの概念構造を明らかにすることである。 今年度は専門職QOLの主要概念「共感疲労(Compassion Fatigue)」及び,近接概念である「共感満足(Compassion Satisfaction)」の文献検討を行った。 共感疲労に関する研究では,文献検索データベース(CINAHL、MEDLINE、医学中央雑誌Web)を使用し,2004年~2019年に公表された文献から35文献を分析対象とした。結果として,共感疲労の研究で対象となる看護師はがん看護、小児看護、救急看護、老年看護であった。看護師のCompassion Fatigueが起こる前提として、患者に対する共感性や思いやりの能力があることが挙げられた。病気や災害で強いストレスを受けた患者の援助を行うことで看護師側に共感が自然と起こるが,長期間の暴露によるネガティブな反応としては疲労の蓄積、身体的・心理的に消耗した状態が挙げられた。帰結として、看護師のパフォーマンス低下だけでなく、身体的・心理的症状から不可逆的に仕事への復帰が困難となり、離職に至ることが示された。 一方,共感満足の概念分析の研究は3文献であり,患者やその家族と関わった結果の看護師側のポジティブな反応として11項目(健康、満足、報酬、達成感、喜び、希望など)抽出した。看護師の共感満足は研究数としてはまだ少なく,看護師の共感疲労との関連など,検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究はStamm(2009)のProfessional QOLの主要概念(共感満足・共感疲労・バーンアウト)を基盤にしており、計画当初、英語版の測定尺度も国内外で普及していたためこれらの主要概念は確立していると判断していた。しかし、研究に着手し、検討が進むとバーンアウトや二次性トラウマ・ストレスとの類似した概念との違いが明らかになっていないこと、国内外の研究者間でも概念に見解の相違があることから、高齢者ケアに適用するには十分な検討が必要と考え、主要概念の再検討を追加した。 最終年度の計画は「高齢者ケア施設における専門職QOLを評価する尺度開発を行うこと」であったが,先行して「看護師を対象としたProQOL日本語版(福森他,2018)」が公表され,本研究と重複することが判明し,計画の再検討を行う必要が生じた。既存の尺度を活用し,高齢者ケアに特化した専門職QOLの実態調査に再構築した方が意義があると考え,再調査を行うため補助事業期間の延長が必要となり,進捗状況としては遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究推進の課題として、研究途上で概念の定義が不十分な点が明らかとなったことに加えて,2018年に看護師を対象としたProQOL日本語版尺度が作成されたことで,軌道修正が必要となった。専門職QOLを構成する共感満足、共感疲労について詳細に検討を行ってきたため,結果を公表するとともに、本来の計画である高齢者ケア施設に勤務する看護職・介護職を対象に本調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度の計画実施に先行して「看護師を対象としたProQOL日本語版(福森他,2018)」が公表され,本研究と重複していることから,2019年度途中で研究計画の修正が必要となった。高齢者ケア施設に特化した専門職QOLの実態調査に再構築し,準備期間が必要であることから2019年度の調査を延期したために残額が生じた。2020年度まで補助事業期間を延長し,2019年度の残額を使用し,調査を実施する予定である。
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