研究課題/領域番号 |
16K12197
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
國吉 緑 琉球大学, 医学部, 教授 (80214980)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 老年看護学 / 高齢者虐待 / 不適切なケア / 介護施設 / 施設従事者 |
研究実績の概要 |
今年度は介護施設従事者の高齢者虐待行為及び不適切なケアの認識と実態を明らかにすることを目的に調査を実施した。沖縄県内の介護老人福祉施設、介護老人保健施設全数の内、研究協力の得られた26施設に従事する介護・看護職771名を対象に、留め置きによる無記名自記式質問紙調査を実施した。回答が得られた659名(回収率85.5)の内、無回答及び調査への同意拒否を除く598(有効回答率90.7)を分析対象とした。調査項目は基本属性、職業性ストレス、エイジズム、高齢者虐待行為・不適切なケアに関する意識と実態及び、経験の有無や発生要因・対応、施設での虐待防止に対する取組みの実際や考え、施設内高齢者虐待への意見(自由記載)、健康状態、本調査への意見(自由記載)等、130項目で構成されている。先行研究を参考に食事、排泄、入浴・清潔、移動・活動、コミュニケーション・接遇の場面毎に高齢者虐待行為及び不適切なケア認識30項目を作成し、さらに各項目を「利用者の侵襲となる行為」、「職員の都合を優先した行為」、「施設の都合を優先した行為」のカテゴリに分類した。対象者の内訳は、看護職118名(19.7)、介護職480名(80.3)、経験年数10年以上169名(28.3)、10年未満427名(71.4)、学生時代に老年に関する講義の受講経験あり232名(38.8)、なし357名(59.7)であった。認識において「虐待行為だと思う」で高かったのは“叩く・つねる”、“居室に鍵をかける”など高齢者虐待防止法に含む虐待行為で、実態としては最も少ない割合であった。カテゴリ別にみると「不適切なケアだと思う」と50%以上回答があったのは「利用者の侵襲となる行為」、「職員の都合を優先した行為」で、その行為のほぼ20%以上が実際に施設内で行われていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
調査票を完成させ倫理審査の承諾を得てから調査を実施するに至るまでに時間を要した。特に施設側からの同意が思うように得られず、また調査票を配布し回収するまでに時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査結果を公表し、他の要因との分析を進める。施設従事者及び一般市民を対象に高齢者疑似体験を行い、体験後、介護施設における「高齢者虐待行為」「適切なケア・不適切なケア」「高齢者虐待の予防・対策」をテーマにグループワークを実施する。もし調査方法の変更を余儀なくされた場合の対応として、グループインタビュー、もしくは質問紙調査を行う。また、国内外で高齢者虐待防止活動を先進的に行なっている施設への訪問調査及び、施設内高齢者虐待防止に関する教育プログラム、実践教育等に関する資料収集を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)調査に時間を要したことから研究費が次年度にまたがることや、当初に予定していた研究が遂行できなかったためである。 (使用計画)繰越金は前年度の計画を遂行するために必要なもので、それを次年度に使用する。
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