研究課題/領域番号 |
16K12197
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
國吉 緑 琉球大学, 医学部, 教授 (80214980)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高齢者虐待行為 / 不適切なケア / 高齢者虐待防止への取り組み / 介護施設 |
研究実績の概要 |
沖縄県内における高齢者虐待事案報告件数も年々増加傾向にあるが養介護従事者(以下、職員)による件数はこれまで10件以内で推移している。しかし平成27年から報告件数は若干増えつつあり、被虐待者数も年度による違いはみられるが、今後も増えることが予測される。虐待の発生要因としては、教育・知識・介護技術等に関する問題、職員のストレスや感情コントロール、管理体制、人員不足に伴う多忙さなどの問題が指摘されている。また、虐待防止法には、施設設置者は、職員の研修、高齢者や家族からの苦情処理体制の整備などを講じること、施設内で虐待を発見した場合、通報する義務が明記されている。これらを鑑み、既に実施した調査(n=614)から、以下について職員の認識を明らかにした。①身体拘束、高齢者虐待に関するマニュアルの整備について、両方ある48.7%、身体拘束のみ22.3%、分からない26.4%であった。通報義務について、知っているは67.6%であった。②施設内高齢者虐待を防止する取り組みとして、職員が必要として考える内容を50%以上認識していたのは、認知症に対する理解(88%)、高齢者虐待に対する知識(81%)、職員を増やす(78%)、高齢者への理解(68%)、高齢者虐待への教育・研修(62%)、職員の相談場所の設置(56%)、人権や権利擁護の教育・研修(51%)であった。実際に取り組んでいる内容としては、職員が最も必要だと認識していた「認知症に対する理解」は上位に取り組まれていた。しかし、「職員を増やす」に関しては、実際には20%程度しか取り組みがされていなかった。また、オンブズマン制度、介護相談員派遣事業、サービス質評価等に対する認識は最も低かった。④職員が望む教育や研修については、新人・管理職に対する研修、不適切なケアの具体例や疑似体験を通した研修、施設内での勉強会を増やすなどの意見がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス拡大防止のため仕事に費やす時間が増えたことや、自己の体調不良、介護の多忙さも重なり研究時間の確保が困難であった。また、このような社会状況の中で、今年度の研究計画を適切に遂行することが困難であった。社会情勢をふまえながら、当初予定していた方法を変更し別の方法で実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果について公表する。また、調査から浮き彫りとなった施設における高齢者虐待行為、不適切な行為・不適切なケアの実態に対する意見、対策・予防等について一般市民を対象にグループインタビューもしくは個別インタビューを行う。また施設内高齢者虐待防止に関する教育や研修等がweb等で公開されている施設についての資料収集を行い、これまでの研究成果と融合し高齢者虐待や不適切なケアに対する予防実践プログラムへの示唆を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
仕事と介護の多忙や自己の体調不良のため研究時間の確保が困難であったことや、コロナ禍の中で予定していた研究が遂行できなかったためである。令和3年度はインタビューやアンケート調査、論文投稿、欧文校閲、印刷等に経費を使用する予定である。
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