研究課題/領域番号 |
16K12197
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
國吉 緑 琉球大学, 医学部, 教授 (80214980)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者虐待行為 / 不適切なケア認識 / 健康関連QOL / 介護施設従事者 |
研究実績の概要 |
今年度は下記の1)2)について実施した。 1)介護施設従事者は介護保険施設利用者の増加や対人専門職として求められる能力の複雑多様化によって心身の不調をきたしやすい。生活及び労働の質は互いに関連していることから、健康状態が虐待・不適切なケアへの認識に対して影響を及ぼしていることが推測される。今回、既存の質問紙調査から介護施設従事者の健康関連QOLと不適切なケア認識との関連について検討した(n=579)。健康関連QOLは日本語版SF-8を用い、国民標準値に基づいたスコアリング(NBS)を算出した。高齢者虐待行為及び不適切なケア認識(以下、ケア認識)には、「利用者の侵襲となる行為」「職員の都合を優先した行為」「施設の都合を優先した行為」の3カテゴリからなる30項目を用い、回答の「全く問題ない行為だと思う」から「虐待だと思う」の順にⅠ~4点を割り当て、各カテゴリの合計得点を算出した。分析に際しSF-8の下位尺度得点を国民標準値である50点で2群に区分し、さらにケア認識の各カテゴリにおける得点を中央値で2群に区分し検討した。ケア認識の各カテゴリ得点を従属変数、健康関連QOLSF-8を独立変数、基本属性と従属変数間で有意な関連を認めた項目(職位、年代、雇用形態)を調整変数とするロジスティック回帰分析を行った。介護施設従事者全体のSF-8の下位尺度のNBS平均値は全て国民標準値を下回っていた。ケア認識のカテゴリ「施設の都合を優先した行為」(AOR=1.72)「利用者の侵襲となる行為」(AOR=1.52、AOR=1.61)についてSF-8のGEとSFの低群に比べ高群において有意な関連がみられた。このことより、健康観はケアへの認識に好ましい影響を与える可能性が示唆された。 2)県内の施設・自治体における施設内高齢者虐待防止に関する教育・研修等の情報はほとんど公開されていない状況であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大のため、今年度に計画していたグループインタビュー、個別インタビューを計画し実施することは困難であった。そのため先に行った調査から介護施設従事者の健康関連QOLについて見直しを行い、不適切なケア認識との関連について検討した。また、公開されている施設内高齢者虐待防止に関する教育・研修等の情報収集については、現在も継続して実施している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果について公表する。また、調査から浮き彫りとなった介護施設における高齢者虐待行為、不適切なケア行為に対する介護施設従事者の認識及び実態や、施設における高齢者虐待防止に対する取り組みへの意見等を基盤にしながら、過去に実施した調査等との比較や、既に公開されている施設内高齢者虐待防止に関する教育や研修等を参考にしながら、本研究課題である高齢者虐待や不適切なケアに対する予防実践プログラムへの示唆を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため予定していた研究が遂行できなかったことと、仕事と生活(介護)のバランスの不均衡のため研究時間の確保が困難であったためである。
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