本研究では、浴槽からの出浴時に一気に立ち上がる(以下、1段階起立法:1群)と一段階間をおいて立ち上がる(以下、2段階起立法:2群)で起立時の血圧変動を減少させることが可能と仮説を立て取り組んだ。健常な若年者に関する成果は昨年学会に手発表し報告した。この度は高齢者を対象にその成果を報告する。 対象は高齢者の男性11名そのうち、心疾患の既往、喫煙、実験の1方法しか参加できなくなったため4名を対象外として7名を研究対象者とした。平均年齢70.0±2.6歳、既往歴に高血圧2名、糖尿病2名が含まれるが、心疾患、喫煙者はいなかった。研究は準実験デザインを用いて同一の対象者に日を変えて2パターンを実施した。入浴方法は、40℃±1度の湯温に6分間浸水後、2群では浴槽内に入浴用いすを設置して1分間座位姿勢を保持、その後起立する方法を設定した。入浴時には海水パンツを着用してもらった。本研究は所属する倫理委員会の承認を得た後に実施した。 実験前の平均値は収縮期血圧(1群129.3/19.2mmHg、2群127.1/21.9mmHg)、心拍数(1群73.9±18.8回/分、2群74.1±13.0回/分)、体温(1群37.1±0.3℃、2群37.2±0.3℃)いずれも両群に有意差はなく自覚症状もなかった。入浴終了後、出浴で起立したときの測収縮期血圧は2群間比較では有意差はなかったが、経時的には、収縮期血圧は(1群108.9±16.6mmHg、2群116.4±26.4mmHg)で1群のほうが有意に低値を示した(p<0.037)。LF/HF及びHFは、入浴前の基準値に有意差があり比較検討は困難であった。入浴中に気分不快や体調不良、立ちくらみ等の報告はなかった。 【考察・結論】以上の結果から、出浴前に浴槽内でいす座位を取り入れると血圧の変動を抑えることで入浴事故の予防に効果的であることが示唆された。
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