研究課題/領域番号 |
16K12205
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
小山 尚美 山梨県立大学, 看護学部, 准教授 (80405117)
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研究分担者 |
渡邊 裕子 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (40279906)
流石 ゆり子 山梨県立大学, 看護学部, 副学長 (70279892)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 急性期病院 / 認知症ケア / 組織づくり |
研究実績の概要 |
平成30年度は、認知症ケア質向上の取り組み実績のあるA病院の中堅看護師および中間看護管理者の認知症ケア質向上に向けた組織づくりの現状と課題を明らかにすることを目的に178名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。90名の回答が得られ(回収率50.5%)、対象者の平均年齢は42.2±7.4歳、平均臨床経験年数は19.66±7.3年、所属部門は病棟50名 (55.5%)、病棟以外33名 (36.6%)であった。組織づくりの取り組み状況では、「認知症ケアへのスタッフの相談に応じる」「カンファレンスで認知症ケアをスタッフ全員で考える」「認知症者の安全保持物品の備え」が7割以上であったが、「スタッフの認知症ケアに対するリフレクション」「認知症ケアの面白さを語れる雰囲気づくり」「認知症者の安寧を考慮した院内の居場所の確保」は2割~3割であった。認知症ケア実践で問題となる状況では、「認知症ケアに自信のないスタッフが多い」「治療が優先され認知症ケアの優先順位が低くなる」「認知症者を担当することの負担感があるスタッフが多い」「認知症者は身体拘束で安全を守るという雰囲気がある」で6割以上があると回答していた。一方、「認知症の専門知識を持つ者との連携がとりにくい」「認知症ケアを発信しても受け取られにくい」は2割未満であった。 認知症ケア質向上に向けた取り組み実績のあるA病院は認知症ケアへの士気が高いものの、急性期病院は治療・安全が優先されやすい傾向があり、認知症者が安心して治療が受けられる物理的環境が整っていない現状があると推察される。また、看護師間の認知症ケアに対する肯定的な対話の不足が、看護師の認知症ケアへの負担感・自信のなさに繋がっていると考えられる。認知症ケア質向上に向けた組織づくりでは、認知症者の安心・安全を保証する物理的環境整備と、看護師間の認知症ケアへの肯定的対話が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の調査において、質問紙の検討・作成に時間を要したため、調査開始時期が予定よりも遅れたこと、調査用紙配布後、回収状況から回収期間を延長したことなどが主な理由である。その結果、大まかな分析は完了しているが、細かな分析までには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、認知症ケアの質向上に向けた組織づくりの取り組み状況および認知症ケア実践で問題となる状況について、対象者の基本属性や所属病棟の特徴などを比較し、認知症ケアの質向上に向けた組織づくりの具体的なアプローチ方法を検討していく予定である。また、研究成果は関連学会等でも発表し、社会に還元する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査結果の詳細な分析にかかわるデータ入力等の謝金、研究成果報告のための学会発表にかかわる旅費、論文作成に必要な文献複写、英文校閲代などを予定している。
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