研究課題
介護施設等(以下,施設)入所者の多くは,不適合な車椅子を使用している.こうした問題解決のために,施設の車椅子利用者に対して姿勢保持を含めた車椅子適合支援(以下,適合支援)を実施してきた.適合支援を組織的な取り組みとして行うためには,適合支援の効果がケア向上にもたらす役割を明らかにする必要がある.本研究では,適合支援が高齢者のケア向上に果たす役割について明らかにすることを目的とした.方法:施設での適合支援を通し安全性,運動性,快適性,生活向上性の4項目の評価を行った.快適性については,健常者を対象に実験を行った.また,適合支援に必要とされる車椅子の開発を行った.結果:主に以下の結果を得ることができた.一つ目は,車椅子座位時の不良姿勢が身体に及ぼす影響について主に自律神経活動の指標から分析を行った.座位姿勢の違いによる座面接触面積と左右座圧の最大値及びNRS結果から,臨床上考える車椅子座位時の不良姿勢が実験時に再現されていた.また,その際の臀部へのリスク及び痛みに対する精神的負担を定量的に明らかにすることができた.二つ目は,適合支援を2施設で実施し合計82回の定期介入を行った.施設での臨床介入を通して,適合支援の効果検証及び評価を多角的に実施した.約80名を対象に評価を行い,適合支援が移動距離,姿勢等及びADLの改善に繋がる傾向が示唆された.三つ目は,臨床介入を通して見えてきた現状の車椅子の課題を踏まえて,全国の施設で使用可能な量産型車椅子の開発を進めた.初回試作機では,適合支援を通して,課題の整理を行い量産可能な車椅子の仕様を検討した.開発段階では,14項目の条件を満たす仕様を目的に開発を進めた.結論:適合支援の効果を多角的に評価することができた.また,適合支援実施時に必要とされる車椅子開発を進めることができた.一方,4項目に関する詳細な評価分析が今後の課題として残された.
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JSPO義装会誌
巻: Vol.37,No.1 ページ: 48-55
巻: Vol.36,No.3 ページ: 202-207