研究課題/領域番号 |
16K12215
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研究機関 | 日本赤十字秋田看護大学 |
研究代表者 |
山田 典子 日本赤十字秋田看護大学, 看護学部看護学科, 教授 (10320863)
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研究分担者 |
大山 一志 日本赤十字秋田看護大学, 看護学部看護学科, 助教 (10707326) [辞退]
渡邊 智 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20292005)
兵頭 秀樹 北海道大学, 医学研究院, 特任准教授 (30306154)
松橋 朋子 日本赤十字秋田短期大学, その他部局等, 講師 (30461718)
及川 真一 日本赤十字秋田短期大学, その他部局等, 助教 (50612678)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者 / 体表の観察記録 / 皮膚の変色 / 虐待 / 早期発見 / 介護と看護の連携 |
研究実績の概要 |
昨年度まで順調に推移していたが、施設内でのインフルエンザ蔓延や、介護職員の離職などの問題があり、データの回収が不良になったため、調査協力施設を増やし現場への研修など開催した。 結果として、60例近いデータは集まった。なかでも、同じ人が何度も打撲や内出血を繰り返すなど、施設の見守りが行き届いていても防ぐことのできない対象がいることが分かった。安易に注意不足とか、保護監督が行き届かないだけではない要因について、これから法医学者や皮膚科医の協力を得て分析していく。目標は100例のため、7月頃までもう少しデータ収集の努力を続ける。 この研究に取り組む過程で、これまで取り組んできたフォレンジック看護の書籍化を実現できた。内容は看護だが、執筆の大半が医師に依頼したため、医学書の体裁になった。 新カリキュラムでH30年度より看護学部においてフォレンジック看護が教授されるため、本研究の成果を反映させて、より実践的な教育への一助としたい。看護学教育に位置づけるための準備として、昨年度「フォレンジック看護」というタイトルの書籍を医歯薬出版社より発行している。また、近日、福山出版より翻訳本「Forensic Nursing」を発刊予定である。自身が企画編集した「臨床法医学(明石書店)」は看護師国家試験に対応した内容を提示しており、今後は実践の教育に活かしていきたい。 年度末の3月30日に共同研究者の渡邊智先生を秋田に招き、病院や介護施設の調査協力者の方々や介護福祉学科と看護学科の学生むけに研修会を開催し、大変好評であった。現在データの一部をクリーニングし分析準備中であるが、創傷の部位の記録において、図示した場合で左右を間違えていたり、大きさが書かれていなかったり、部位が異なっていたり、看護師や介護士は正確に外傷記録を記述できないことが散見された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度途中に全くデータが集まらなくなり、20ケースでとどまっていた時期が8か月以上続いたが、施設を増やし、研修をすることでデータ回収が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在約60例で3000枚以上の画像データが蓄積されており、7月までデータの回収を続ける。現時点で集まったデータを概観すると、介護士ならまだしも看護師でさえ創傷の看護観察記録をきちんとかけていなかった。まず「皮膚色の異変や異常に気が付くこと」、そして「よく見る」こと、そのうえで「局所と全身の観察記録を記述すること」は、基礎的な看護教育を受けたものであればできると思ったが、褥瘡皮膚観察の認定看護師でさえ、決まった記録用紙のフォーマットがないと観察漏れや記録漏れがあることもわかり、基礎的な看護教育および介護士の記録の書き方、残し方について再教育が必要であると感じた。高齢者が家族や介護者から大切に扱われているかがそれとなくわかる指標として、耳垢がたまっていないか、爪が整えられているか、爪が汚れていないか等、ちょっと見ればわかる項目を記録用紙に付け加えていたが、それさえも見たのか見ていないのか不明な記録が散見された。通常1週間から10日ぐらいで消失する打撲の跡も、高齢者では1か月、2か月の観察を要する事例もあった。観念的な知識で分かっているつもりで見ている高齢者の体表は、実はきちんと視られていなかったかもしれない。 最終年度は、これらの写真データと観察記録を照らし合わせ、法医学者による専門的な体表観察と診断を行い、注意が必要な部位、皮膚の変色、回復過程や悪化の兆しについて抽出してもらい、何らかのガイドラインを示すことができたらよいと考えている。 さらに、皮膚色の変化は毎日担当が変わる病院や施設では記録が難しいし、色の変化を記録に残すことが難しいため、体表色の変化を電子カルテに保存できるようなソフトがあると、患者(高齢者・療養者)の異変を早く気が付くきっかけになるかもしれないと考えた。この点に関して北海道大学の兵頭先生が企業に打診中であるため、何らかの示唆が得られるよう本年度も真摯に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ回収のために、前倒しで研究費使用の申請をしたが、その後回収のスピードが遅れた。結果的にはデータの回収が進んでいるが、研究協力の謝金は、施設への研修提供や、書籍の配布などによって代替したため、当初の予定よりも支出が抑えられた。 このたび本研究に取り組んだことで、看護教育及び介護士教育の課題が焦点化された。多職種協働の必要性や様々な教育背景(例えば看護師と一口に言っても、准看護教育、専門学校教育、短期大学、4年制大学、大学院修了者等様々である)と現状を鑑みた現任教育の必要性を痛感した。 体表観察記録の標準化を促すために、次年度持越しになった予算で法医学者複数の協力および皮膚科医のオピニオンをいただき、画像診断ツール(ソフト)の開発予算に回したい。
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