本研究では、看護と介護の可視化を図るためのクリニカル・ダッシュボードの設計と評価を行ってきた。 これらの可視化要素として、電子カルテシステムから得られる注射実施などのデータ、ナースコールシステムから得られる離床センサー反応などのデータを集約することで、痛みへの対応を迅速に行ったかなど看護・介護の質を可視化するためのデータセットを構築することもできた。さらに、看護記録などの定性的な文字情報については、(1)テキストマイニングによりキーワードを抽出する作業、(2)そのキーワードの有無をレコード単位で判定する作業、を行うことで、ある程度は定量データに変換できることを確認することができた。これらを合わせていくことで、クリニカル・ダッシュボードに表示すべきデータ項目をかなり充実させる可能性があることも確認した。 他方で、看護記録などの定性的な文字情報については、病院ごとの記録記載文化があるため、病院を超えた質評価データとして用いることは困難であることもわかった。また、定量化されたデータも、看護・介護分野の標準化が必ずしも進んでいないことから、複数の病院での比較が困難と思われるデータが多いことが判明した。 また、看護・介護の質評価データとしては、病院情報システムだけでは収集しきれない生活援助行動もあるため、これらは位置検知システムなどを併用することが必要と考えられた。 これらの研究成果は、日本生体医工学会大会や医療情報学連合大会などで報告することができた。
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