本年度は、健康支援・認知症予防の観点から、地域在住高齢者65歳以上を対象とした匂い刺激を用いた回想法を実施した。本研究では、テーマ毎の懐かしい匂いの思い出を素材に、参加者がテーマに関する懐かしい思い出を語るという回想ワークのアクテビティを行なった。最終回は、思い出のにおい袋を作成し、回想法の修了後も回想を促すためのトリガーとした。また本研究は、回想法の実践が、健康支援のみならず介護予防や回想法参 加後の自主活動グループへの発展を目的に研究を行ない、その有効性を検証するものである。地域在住の65歳以上の高齢者8名(男性1名、女性7名)を対象に週1回、1時間の計8回行なった。調査結果では、認知機能(SKT)や抑うつ傾向(GDS15)においては、介入前後で有意な結果は得られなかった。QOL(SF8)については、前後比較においていずれの項目も平均値による改善は見られるものの有意差 は、得られなかった。セッション評価では、短期効果を検証し、初回と最終回を比較し、「グループへの参加意欲」、「回想、発言内容の発展性」、「喜び・楽しみなどの満足度」、「対人コミュニケーション」の4項目いずれも有意差(1%水準)、さらに「回想、発言内容の発展性」に有意差(5%水準)が得られた。また1回目と8回目の全項目平均値の比較では、有意差(5%水準)が得られた。グループでの積極的な交流も見られ、大きな変化が見られた。 本研究の参加者では、独居高齢者が多いものの、比較的、認知機能や抑うつに問題がない高齢者が参加し、いずれも天井効果がみられ、有意差が得られなかったものと思われた。しかし、グループ回想法修了後も自主的に定期的に集まり、自主グループ活動を継続しており、今後、グループへの発展など健康支援や介護予防につながる可能性が示唆された。
|