本研究は、介護保険あるいは医療保険による公的な保険制度外(法制度外)となる、先駆性のある訪問看護を実践する看護師が、どのように法制度にない看護ニーズを把握して、そのニーズに対応する実践をして、社会の課題の解決に結び付けていくのか、その手法を可視化することが目的である。 1年目(平成28年度)は、先行研究の検討等を踏まえ、法制度外となる居宅外での訪問看護の実績を把握するための調査を設計した。 2年目(平成29年度)は、全国の比較的規模の大きい(看護職員の常勤換算数5名以上等)訪問看護事業所1773カ所の管理者(看護師)宛に、居宅外での訪問看護の実態に関する自記式質問紙を郵送する調査を実施した。 3年目(平成30年度)と4年目(平成31年度)は、居宅外での訪問看護の実践のあった利用者167名に関する質問紙調査の分析と、質問紙調査の回答者から面接調査の対象者を抽出して、半構成化した質問紙による面接調査を実施した。面接調査では、訪問看護事業所の看護師9名から、居宅外での訪問看護を実践する過程において、看護師自身から語られる実践ニーズの把握の手法等についてのデータを得た。 本研究の成果は、訪問看護事業所では難病等の疾患をもつ訪問看護の利用者で、人工呼吸器管理などの医療処置管理が必要な状況であるために、病院と自宅の間の移動の同行などの退院時や受診の支援、買い物や旅行などへの外出の支援、就学先や施設などへの訪問といった居宅外での訪問看護の実践があった。また、居宅外で訪問看護を実践していた訪問看護師は、実践前に事業所内の複数の看護師とともに、訪問看護事業所の利用者や家族に看護師が実践をする必要性、信頼関係の構築された利用者や家族への実践の提案、実践による効果の予測、居宅内とは異なる居宅外で起こりうるリスクの予防や対応策等について検討を重ねた上で実践していたことが明らかになったことである。
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