研究実績の概要 |
看護職自らが経営者(オーナー)となっている訪問看護ステーション(訪看ST)の管理運営の実態の把握と看護管理実践での困難の認識を調査した研究である。自己開業したオーナー管理者への聞き取り調査と、全国の訪看STの管理者を対象にした質問紙調査の2つを実施した。 オーナー管理者10人へのインタビュー調査では、自己開業に至った経緯、実践での困難感を聞き取った。自ら開設しようとしたきっかけは、「自分の思う看護がやりたい」という事を中心に、看護職が自らの働きを目に見える形で報酬に変えていく仕組みにしたいという思いが語られた。管理者としての苦労は、人材の確保、経営の維持など、非オーナーの場合と同じようにあった。しかし、それらは自ら選んで引き受けていることで「困難感」ではないという認識が語られた。 質問紙調査では、訪看STの入手できるリストでは看護職がオーナーであるかどうかの識別が困難であったため、全訪問看護ステーションを対象にした。全国の訪看STのうち無作為に1/2抽出を行い、廃止休止の事業所を除く4,394ヵ所を対象とした。調査内容は、事業所や管理者の個人特性、管理を担う後継者育成等とした。これらをオーナーと非オーナーで比較して分析した。回収は1,213件(28%)そのうち1,205件を分析対象とした。管理者の平均年齢・看護経験年数・残業時間・男性の割合等でオーナーの方が高く、看護職員数・利用者数等では非オーナーの方が多いという結果がみられた。また、管理を担う後継者育成に焦点を当てた分析では、オーナー管理者では育成での重要度に置いて、訪看STの理念の継承、経営の維持、社会的貢献で点数が高かった。さらに、後継者育成の困難感では、オーナー管理者の方が、社会的貢献、管理者になることへの意欲での困難感が低いことがわかった。今後さらこれらの要因の背景などの分析を深めて行く計画である。
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