研究課題/領域番号 |
16K12294
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小林 敏生 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 教授 (20251069)
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研究分担者 |
張 峻屹 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (20284169)
影山 隆之 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (90204346)
安東 由佳子 長野県看護大学, 看護学部, 教授 (50314745)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 森林セラピー / 健康保持増進 / 労働者 / メンタルヘルス / QOL |
研究実績の概要 |
本研究では,余暇を利用した健康保持増進活動として,働き盛りの労働者を対象とした森林資源の活用(森林セラピー)に注目して,1泊2日の滞在型の森林セラピーが労働者の心身の健康状態に与える効果について科学的な検証を行った.2016年8月から10月にかけて3回開催した1泊2日の森林セラピーへの参加者のうち生産年齢層の32名(19~59歳)を対象とした.森林セラピー実施前に,参加者の健康関連QOL,および不安・抑うつ状態,気分・感情プロフィール検査(POMS),体調自己評価,ストレスコーピング特性,ストレスに関するアンケートを実施した.同時に,循環機能測定および自律神経機能測定を実施した.次に,2日目の森林セラピー実施前後に同様の調査,測定を実施した. 対象者は,抑うつ傾向有の者(K6≧5点)が46.9%と高かった.また,滞在中の気分・感情(POMS)の変化については,1日目の森林セラピー前と比較して,2日目の森林セラピー前において,POMS下位尺度に,それぞれ有意な改善を認め,2日目のセラピー後にはさらなる改善,あるいは維持を認めるものが多かった.循環機能および自律神経機能の変化については,2日間を通じて収縮期血圧および脈拍数は次第に低下し,HF(副交感神経活動)は上昇,LF/HF(交感神経活動)は低下する傾向を認めた.ストレスに関するアンケートについては1日目の森林セラピー実施前に比べて2日目のセラピー終了時に,ストレスの有意な減少を認めた. 今回の1泊2日の森林セラピーによって健康保持増進効果が認められたが,心理的効果と生理的効果の出現の時期が異なる可能性も考えられ,今後はさらに対象者を増やした検討が必要である.また,参加した生産年齢層の労働者は,抑うつ傾向者が多いことから,抑うつの有無別の比較を行うことで,効果的な森林セラピープログラムの開発につなげる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の予定のうち,当初予定していた日帰りの森林セラピーの実施が困難となり,1泊2日の宿泊型の森林セラピーを実施したが,実施日数および対象者数が計画よりもやや少なくなった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究計画では,昨年度に得られた結果を検討し,より効果的と考えられる森林セラピープログラムを開発する.開発したプログラムを用いて,昨年度に引き続き1泊2日の森林セラピーを実施し,その健康保持増進効果を検証する.また,参加した生産年齢層の労働者は,抑うつ傾向者が多いことから,抑うつの有無で層別化した解析を行い,メンタルヘルスプロモーションに繋がる森林セラピープログラムの開発を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた,森林セラピーの実施回数及び参加者が予定よりも少なかったため,必要経費や謝金などが予定よりも下回ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,森林セラピーの実施回数と対象者を増加させること,および海外の森林セラピー基地への訪問と情報交換の実施,国際学会での情報発信に助成金を使用する予定としている.
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