子ども虐待防止に向けて、妊娠期からの継続した支援の重要性が高まるなか、保健師はその中心的役割を担っているといえる。そのため、子どもや親、家族への支援を行っていくなかで、保健師は様々な困難を感じている現状がある。本研究は、子ども虐待防止に携わる保健師が感じる困難の実情とその関連要因、研修に対するニーズについて明らかにすることを目的として、文献検討をもとに作成した質問紙を用いて、これまでに全国の保健所、市町村に勤務する保健師を対象に質問紙調査を実施した。 保健師の困難感の因子構造については、≪問題を抱えた親、家族への支援≫、≪支援に向けたアセスメントとつなげ方≫、≪関係機関との連携≫、≪支援を行う保健師としての能力≫、≪部署内での協働≫、≪虐待を受けた子どもへの支援≫の6つの因子が抽出された。これらの困難感のうち、≪部署内での協働≫を除く5つの因子では、保健師経験年数、役職、虐待に関する研修受講経験、携わった虐待の事例数によって、因子の項目の合計得点に有意な差が認められた。また、保健師が子ども虐待に関して必要としている研修の内容については、「親への関わり方や支援」、「事例検討」、「保健師としての役割・対応」、「関係機関との連携」などを中心に、多岐に及ぶことが明らかとなった。 子ども虐待防止に携わる保健師の困難感には、子どもと家族の状況を適切にアセスメントして迅速に支援につなげるとともに、関係機関と連携しながらその後も継続的にかかわるという保健師が行う支援の過程が反映されていた。そして、困難感は保健師の経験年数や役職、研修受講経験、携わった事例数により異なっていたことから、こうした困難感の特徴をふまえた保健師への支援プログラムの必要性が改めて示唆された。
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