研究実績の概要 |
本研究は、コミュニティの互助促進に向けた行政育成型住民組織の効果的な活動モデルを開発することを目的としている。平成28年度は、「コミュニティの互助」に関するレビューおよび全国調査を実施した。 文献レビューでは、近年の「コミュニティの互助」の概念を、文献により明らかにした。概念分析には、概念の特徴を先行要件、特性・属性、帰結によって明らかにするRogers(2000)の手法を用いた。概念分析の結果を踏まえ, 現代の日本社会における「互助」を以下のように定義した。「費用負担を制度的に裏付けない価値観のもと, 地域において住民が他の住民あるいは地縁に基づいた組織・集団との間で, お互いさまの精神を持って行う自発的・主体的活動であり, 住民間の助け合い・支え合いや生活課題の解決手段として実践されるもの。また, 自助・共助・公助の補完的な役割を果たすものである。」 全国調査では、効果的な活動モデルの作成に向けて、政令指定都市を除く市町村1,898箇所および、政令指定都市の行政区162箇所を対象に自記式質問紙調査を行った。798箇所(回収率42.9%)から回答が得られた。この調査により全国の先駆的な事例を幅広く収集することができた。また、現在の行政育成型住民組織(食生活改善推進員、健康づくり推進員等、愛育班、母子保健推進員等)の実態および課題を明確にすることができた。全国の設置率は、食生活改善推進員は84.5%、健康づくり推進員等は63.2%、愛育班は9.6%、母子保健推進員等は24.9%であった。いずれの組織においても「メンバーが高齢化している」「新しいメンバーがなかなか見つからない」は共通した課題であった。
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