研究実績の概要 |
最終年度は,平成23.24年度から乳幼児健診に並行しSACS-Jを用いた保健師が行動特性を評価した行動観察等評価項目(課題項目)とASD診断との関連,ASDの予測妥当性を検討した。1歳半及び3歳児健診を受診した372人の医学診断によるASD群との関連は,各月齢時期に共通して定型発達群とASD群間でアイコンタクト,共同注意行動(15か月「共同注意(視野外の指さし理解)」20か月「共同注意(大人)」「共同注意(自分)」「応答の指さし」27か月「自発的提示(見てみて行動)」),言語発達(15か月「有意味語の有無」20か月「有意味語獲得時期」27か月「二語文」・38か月「三語文」)で有意差が認められた。予測妥当性は,10か月「共同注意」(オッズ比2.5),20か月「共同注意」(9.1)と「ふり遊び」(3.7),38か月「用途・概念理解」(5.6)が選択され,各回帰モデル予測率は97.6~98.1%であった。これらから,保健師による標準化された行動観察評価を1歳半健診前からの早期に導入することで,ASDが疑がわれる児を健診を足掛かりとし早期に同定し,保健指導や養育発達支援に結び付けられる可能性が示された。さらに,1歳半健診で社会性の発達を評価する視点を学ぶe-ラーニング及びDVD教材を制作した。特徴は,乳児期から幼児期早期の社会性の発達の理解と課題項目の行動観察の視点を,学習の前後で行動観察を評価し,次に課題項目ごとの異なる3つの行動を評価する点にある。これらの評価者内一致率はほぼ100%であり,検査者間信頼性は [ICC(1,2)]=0.79~1.0と高い信頼性が認められた。教材製作の過程で,行動観察実施時の子どもに向けたプロンプトに差が見られたことから,標準化を図る目的で群馬県と共同し,行動観察の実施に向けたマニュアルとイントロダクション映像の制作を行なった。
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