研究課題/領域番号 |
16K12351
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
中田 晴美 東京女子医科大学, 看護学部, 准教授 (90385469)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 便失禁 / 介護予防 / 地域在住女性高齢者 |
研究実績の概要 |
わが国の地域在住高齢者の排便障害に関する研究の動向として、2000年代に入ってから介護予防への取り組みの一環としての尿失禁予防・改善を図る研究が散見されるようになってきた。しかし、尿失禁より発症率は低いものの、一度発症すると高齢者のQOLを著しく阻害する便失禁についての研究は非常に少ない状況にある。そこで本研究は、地域在住女性高齢者における便失禁の現状を把握した上で、便失禁・予防改善にむけた包括的排泄ケアプログラムの開発を行うことを目的としている。 地域在住女性高齢者における便失禁の実態を把握するため、平成28年度、平成29年度にA自治体で開催された尿失禁予防講演会の参加者を対象とし、無記名記述式の質問紙調査を実施したが対象者数が少なかったため、平成30年度も引き続き調査を実施した。A市で開催された尿失禁予防講演会において質問紙調査への回答があった40名(平均年齢65.8歳、回収率48.2%)のうち、尿失禁経験者であり、かつ「過去1年間での便失禁の経験があるか」という項目について「経験あり」と回答したのは14名(35.0%)であった。この結果は、尿失禁がある者のうち約1~2割に便失禁を有する者がいるという先行研究よりも高い値であった。これまで、加齢に伴う骨盤底筋の脆弱化により腹圧性尿失禁発症のリスクが指摘されているが、それのみならず便失禁についても今後策を講じる必要性が高いことが示唆された。合わせて、便失禁発生による生活の支障については【医療機関選択に関する情報の必要性】、【便失禁用衛生用品の不足】、【鬱々とした気持ちを抱える】、【食事の楽しみの低下】など、便失禁に関する情報不足や高齢者のQOL低下への著しい影響が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、地域在住高齢女性における便失禁の現状を把握し、便失禁予防・改善にむけた包括的排泄ケアプログラムの開発を行うことを目的としている。今年度は、便失禁発症に関連する要因を分析する計画であった。平成28年度、平成29年度に便失禁の実態把握を実施したが、対象者数が少なかったため、平成30年度も引き続き便失禁実態把握のための調査を行った。地域在住女性高齢者における便失禁経験者の元々の対象者数が少数であるため、研究協力者の確保に時間がかかっている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、研究対象者を確保するための工夫として、尿失禁予防講演会に参加している地域在住高齢女性は、排泄障害に関する関心が高く、かつ、これまでの実態調査の結果から、尿失禁と便失禁の両方を併せ持つ対象者もいることから、引き続き、各自治体で開催する尿失禁予防講演会参加者に対し、同様の依頼を行い対象者数を増やしていく。加えて、質問紙調査に回答し研究参加への同意を得られた者に対しインタビュー調査を行うことで、便失禁の発症に関連する要因分析、便失禁が女性高齢者のQOLに与える影響及び、対処行動について概念枠組みを行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
質問紙調査におけるQOL尺度使用料、質問紙調査用紙印刷、インタビュー調査の逐語録作成および質問紙調査データ入力作業補助のための補助員謝礼、調査のための研究代表者交通費、消耗品等を研究を遂行するための主な費目として使用する予定である。
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