研究課題/領域番号 |
16K12356
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
岩佐 真也 武庫川女子大学, 看護学部, 准教授 (70405372)
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研究分担者 |
和泉 京子 武庫川女子大学, 看護学部, 教授 (80285329)
大野 ゆう子 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60183026)
神原 咲子 高知県立大学, 看護学部, 准教授 (90438268)
海原 律子 武庫川女子大学, 看護学部, 助教 (50757440)
本村 純 名桜大学, 健康科学部, 准教授 (50632999)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 健康格差 / 社会的弱者 / 保健師 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、貧困率・生活保護率の高い地域における、社会的弱者の健康実態に関する保健師の認識と社会的弱者に対する活動実態を実施した。方法は、貧困率・生活保護率の高い地域で活動を行なう保健師への半構成化質問紙を用いた面接調査である。調査の結果、9人から同意が得られた。テキストマイニングにより、原文文字数55,999、分かち書き数29,019、キーワード数5,293を得、以下のことが明らかとなった。 1.保健師は日々の活動の中で‘生活’を見る視点を持ち‘相手の気持ち’により添うことが重要だと考えていた。2.社会的弱者の健康格差について知っていることとして、‘お金’が最も多く挙げられた。この‘お金’を第一キーワードとして「精密検査をうけない」「検診をうけない」「病院に行かない」など‘健康’についてのつながりをとらえていた。また「孤立している」「知り合いがいない」などの‘生活’をとらえていた。3.しかし、社会的弱者を明確に把握はしておらず、生活保護受給者と認識している者も多くいた。4.社会的弱者を意識した取り組みや活動は約半数が「ない」と回答した。5.社会的弱者への保健活動に対する思いは、‘やっぱり’「難しい」、「健康に関して問題意識を持たない」、「関係部署との連携が必要」との意見が聞かれた。 生活保護率や貧困率が高い地域で活動鶴保健師は、健康格差という言葉は知っているが、それが人々の暮らしの中で具体的にどの様なこととしておこっているのかは十分理解していなかった。また社会手弱者への健康格差の視点からの取り組みは少なかった。普段の活動の中での気づきを、より意識して取り組むことに向うための手立てが必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、面接調査の対象者を抽出できた。しかし、当初予定していた人数(約20名)より少なく9名からしか研究同意が得られなかった。これは対象市区の同意が得られなかったためであり、計画が当初計画通りに進まない時の対応として考えていた、「市区の同意が得られなかった際は、順次生活保護率が低い市区に依頼を行う」ことで対応した。具体的には、対象府県の平均生活保護率を下回る市区しか同意が得られなかった場合、対象人口を100 万人口5 万から10 万人口、30 万から50 万人口へと広げることで対応し、市区より保健師の推薦がない場合や保健師の同意が一人も得られない場合も、上記同様に対象地区を広げて対応した。市区の同意を得るために依頼文書を出し、その結果を受け取るまでに約3週間を要した。 このような市区が複数あり、結果的に同意が得られた者が少なく、また調査時期が予定よりも遅くなってしまった。しかし、同意が得られた者からは有意義な内容を聴取することが出来た。データの分析も研究者間で協働し予定時期に終えることが出来た。よって、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29 年度は、保健師面接調査より明らかになった社会的弱者の健康認識や活動実態を反映させた自記式調査票を作成し、全国市区町村保健師への悉皆調査により社会的弱者に対する活動の実態把握を行う。そのために、4月から7月は全国市区町村保健師への自記式質問紙の検討を行う。7月の倫理委員会にて審査を受けその結果を基に秋ごろ(9月~11月)に、社会的弱者に対する全国市区町村保健師への健康認識・活動実態悉皆調査を行う。 計画当初は、全国の1,748 市区町村(総務省,平成26 年4 月現在)に所属する保健師約27,000 人を対象としていたが、データの入力作業(業者委託)の単価が高くなっており、3年間を予算と実現可能性を考慮し対象者を全国の1,748 市区町村を対象とするものの市区町村の保健師数に応じた比例抽出とし、保健師約15,000人を対象とし実施する。方法は、当初の計画通り、郵送法による自記式質問紙調査とする。調査内容は基本属性(部署、役職、年齢、勤続年数)、所属市区町村の人口規模、高齢化率、保健師の社会的弱者の健康認識、活動の必要性認識、実際の活動内容等、社会的弱者への支援に関する項目とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度である2016年は貧困率・生活保護率の高い地域で活動を行なう保健師への半構成化質問紙を用いた面接調査による、社会的弱者に対する健康認識と活動の実態把握を行なう計画であった。具体的には、対象地候補として那覇市、沖縄市、高知市、室戸市、大阪市西成区、門真市、青森市、弘前市を抽出し計約20 名にインタビューをする事としていた。しかし、対象市区の同意が得られず、また順次対象地候補を計画に則り変更したが、それでも市区の研究同意のが得られず、結果的に9名のインタビューとなった。それに伴い、旅費が大幅に残った。またデータ入力業務(テープお越し)を業者発注する事を考え予算計上していたが、研究同意者が少なかったこととデータ量(録音時間)が予定より短かったことから、人件費として計上していたアルバイト員にて作業を行った。そのため、「その他」に計上していた費用を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度は「社会的弱者に対する全国市区町村保健師への健康認識・活動実態悉皆調査」を実施する。自記式質問紙調査の印刷では、当初予定よりも印刷等の単価が上がっており、また得られたデータの入力単価も高くなった事から、前年度の未使用額をその費用にあて計画を進める。
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