研究課題
自記式調査のデータ集計から、社会的弱者に対する健康認識と活動実態の現状と課題を明らかにした。調査票の有効回答数(率)は13,277(47.3%)で、健康格差という言葉の意味を知っていた者は約6 割であったが、知識として健康の地域格差や個人の社会経済的背景による健康格差があることを約9割の者が理解していた。具体的な健康格差対策について分かる者は、約1割にとどまった。健康格差対策に関する政策や計画等について知っているものは、政策や計画等により約0.5 割から約5割と限定的だった。日々の活動の中で健康格差を感じている者は約9割で、健康格差を縮小するための取り組みを必要だと感じ、また保健師はその担い手のひとりであると感じていた。日々の活動を行う際に、既存のデータを活用している者は約8割であった。社会背景ごとの健康指標の違いをデータ化している者は約2 割と少ないものの、データ化している者はそれらを活用できている者が多かった。『社会的弱者の把握の機会』は、「各種相談時」や「訪問時」、「関係部署や関係機関との連携・調整時」、「各種事例検討会時」で有する者が多かった。実際に各機会で社会的弱者を把握しているかについては、「妊娠届出時」や「訪問時」、「乳幼児健診時」、「各種相談時」、「各種事例検討会時」などで約9割以上が、「住民の主体的活動の支援時」や「各種計画立案・評価時」では、約5 割が意図的な把握を行っており、機会により差が見られた。社会的弱者の把握の機会に関わらず、対象者の経済状況や職業といった社会経済的背景を意識して把握している者が多かった。以上から、健康の社会格差の視点を包含した保健師の活動支援方略として、まずは、健康格差の理解が深まるように知識の伝達を行い、既に行っている保健活動と健康の社会格差を意識した活動がどのように関連しているかを伝えていくことが重要である。
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