本年度は、デジタル技術を活用した無形民俗文化財振興の方法とその効果について検討を行った。 具体的には、南三陸町(宮城県)、仙台市(宮城県)、川西町(山形県)の芸能を対象として、モーションキャプチャを行い、CGを活用した練習用教材、またVRを活用した練習教材を作製した。それらを保存団体の人々に活用してもらい意見を聞いた。また、アーカイブ手法についても保存団体と地域の人々を対象にしインタビュー調査を行った。その結果、学校等で芸能を教える機会等に練習用として使える可能性が見えてきた。またその活用により保存団体の負担が減る可能性も見えてきた。しかしながら郷土芸能団体自体が通年で活動していることが少なく、デジタル技術を活用した練習が難しい点も指摘された。 また、無形民俗文化財の振興が、地域コミュニティ再生に対しどのような役割を果たすのかについても検討した。具体的には、無形民俗文化財をデジタル化することで、継承者だけでなく地域の人々の意識を変化させることが可能かどうか検討した。興味関心が高まること、また郷土を知ることに役立つことがインタビュー調査からはうかがえたが持続性等に問題があることも同時にわかった。しかしながら、保存団体がデジタルを用いて保存しようとしているという気持ちを地域の人たちが知ることで、その地域の人たちがその芸能を見直すきっかけとなり得ることもわかり、デジタル化という試みそのものが、芸能の保存、また地域の人々の気づきにつながる可能性があることがわかった。
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