2020年度の研究実績は、以下の4点である。第一に、塩谷町主催事業として毎年開催されている甲状腺検査会場にて、参与観察とアンケート調査を実施し、その結果をとりまとめて塩谷町役場並びに受検者宛てに報告した。第二に、原発事故とその被害に関する教育の在り方について、オンラインの公開研究会を開催した。第三に、栃木県での調査結果を踏まえた研究報告を、国際学会(2020年9月)と国際会議(2021年3月)、また公開報告会(2021年3月)において行った。第四に、過去5年間の調査結果を踏まえて、今後必要な原発事故後の対策に関する論文を執筆し、公表した。 研究期間全体を通じて達成した研究の成果は、以下の3点である。第一に、1つ目の研究目的として掲げていた北関東地域における被災状況及び復興政策に関する当該地域住民の意識調査として、栃木県の那須塩原市、矢板市、塩谷町、益子町における甲状腺検査会場で毎年アンケート調査を実施し、民間検査に関しては過去4年間(5年目はコロナ禍を受けて検査が中止された)、自治体による検査(塩谷町)に関しては過去5年間の調査結果を蓄積することができた。第二に、2つ目の研究目的としていた北関東地域の原発震災被災地における住民活動の調査と記録のため、栃木県内の測定活動や甲状腺検査を実施ている住民団体関係者の聞き取り調査と、自治体による対応状況に関するアンケート調査を実施した。これらの調査結果報告書は、コロナ禍を受けて遅れていたが、2021年度中に刊行する予定である。第三に、「人間の安全保障」論を用いた権利回復運動の検証と権利保障のための分析という3つ目の目的に関しては、学会や国際会議での報告、論文や書籍の刊行、公開シンポジウムや研究会の開催を通して、広く社会に発信することができた。
|