平成28年度から平成30年度は、若年養護教諭並びに養護教諭志望学生のニーズの把握および大規模自然災害体験者の経験談の聴講がどのような効果をもたらすのかを測定するため研修会を実施し、データを収集した。 養護教諭が大規模自然災害発災時に、子供たちの心と身体の健康を保つことに力を発揮するためには、養護教諭自身の健康を担保することが大切である。養護教諭は、大規模自然災害により被害を受けた子供たちから、悲惨な状況を繰り返し聞く機会が多い。子供たちの中には、周りと自分の状況を比較し、他者の方が悲惨な状況であると認識した場合、真の支援ニーズを表現しないことも多く、その対応に苦慮することも多い。また、子供たちの悲惨な状況を繰り返し聞くうちに共感疲労を起こす可能性が高いことが予測される。 そこで、令和元年度は、共感疲労に陥ることを避けるための方策について検討するため、これまでの研修会で収集したデータや文献研究で得られた知見を再整理した。特に、子供の真の養護ニーズを見極めるためのスキルの一つである微表情検知能力及び表情が表現する感情を誤検知するメカニズムを明らかにするため、収集したデータの分析を行った。その結果、共感性の高い養護教諭志望学生の方がそうでない学生より、表情から読み取る感情を誤検知する可能性が高いという仮説を得た。また、導き出した仮説と先行研究の知見とを検討し、健康観察に関わる表情分析のスキルが共感疲労のプロセスに関係するという仮説を得て、関連学会で発表した。 これまでの研究成果は91ページの研究成果報告書としてまとめ、700部印刷した。その研究成果報告書は各県の教育委員会・教育センターのほか、災害看護学を学ぶ看護系養護教諭養成機関以外の養成大学に見本誌として発送し、若年養護教諭や養護教諭を志望する学生の教育に活用してもらうべく、求めに応じて必要部数を送付する。
|