研究課題/領域番号 |
16K12385
|
研究機関 | 環太平洋大学 |
研究代表者 |
沼田 秀穂 環太平洋大学, 経営学部, 教授 (60450178)
|
研究分担者 |
青木 輝勝 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (00302787)
池田 佳代 環太平洋大学, 経営学部, 准教授 (80559956)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 災害 / ソーシャルメディア / 信頼 |
研究実績の概要 |
東日本大震災により被害をうけた被災地では、非常時における様々な需要が明らかとなった。そのひとつが、災害情報管理である。災害時に必要な情報流通やそのトラストに関する研究が、わが国では進んでいない。ソーシャルメディアは東日本大震災を機に情報伝達・共有ツールとしての社会的ポジションを確立した。公共機関においてはOpen Dataへの取り組みが進んでいる。情報化社会では、市民が社会の発展と改善に積極的に参加し、責任と役割を担う仕組みの設計が望まれる。本研究は、ソーシャルメディアに流通する情報に対する信頼度を量的・質的に示すことで、災害時のソーシャルメディアを用いた有効な意志疎通の仕組みを探求し、同時にトラストの新たな適用分野として社会情報学研究領域における確立を目指す。過去事例をベースに災害時に必要となる災害コミュニケーションについて信頼面から検討し、意志疎通確立を支える。また、災害コミュニケーションの研究領域の確立を目指す。災害発生後の2次災害を防止することは非常に重要であり、その為に被災者に速やかに適切な信頼のおける情報提供が必要である。 意志疎通や情報共有のため、日常のコミュニケーションから見た災害コミュニケーションを検討し、有効な意志疎通方法を提言するとともに、どのような手法によりSNS流通情報の信頼度(トラスト)判定が実現できるかを検討する。 具体的には、①信頼度判定のための位置情報可視化システムの検討、②群れ行動から見た信頼度判定システムの検討、③集合知を用いた信頼度判定システムの検討、④信頼度判定に基づき拡散しそうなデマを発見・抽出するシステムの検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画は (1)震災復旧支援についての過去事例の各種記録、文献、関係者への聞き取りによる調査 (2)Twitter等の各種ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の記録の調査・分析 (3)群れ行動から見た信頼度の問題点と対策の要求条件の抽出 本年度はうわさデマ流言に関する先行研究のサーベイを行い、定義づけおよび、情報の信頼性における論点を整理した。信頼は他者と関わる行動の中から生じ、またその信頼が自身の行動に繋がっていくという先行研究をベースに、実際の複数組織(社会福祉施設、農家、企業)に質問紙調査をかけて信頼生成の要因を明らかにした。続いて、SNSの記録の調査・分析に着手した。これらの分析をベースに信頼度の問題点と対策の要求条件の抽出が行えた。同時に、群れ行動学で知られた様々な知見適用について検討し、アルゴリズムの基本設計を行うための表現方法についての検討を実施している。また、ネット依存との関係性についても調査を実施した。大学生は高校生よりもインターネットが生活の一部となり、ネット依存状態からさらに中毒状態へ移る傾向があることが分かった。 この要求条件をベースに、平成29年度はさらに、SNSの記録の調査・分析を継続とともに、質問紙調査を実施していくことで、要求条件の精査を実施していく。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、昨年度の研究成果をベースに、 (1)Web質問紙調査を実施する。居住都道府県別、年齢別、性別にソーシャルメディアや自治体情報に関する意識調査を分析する。 (2)集合知を用いた信頼度判定システムの要求条件の抽出を行う。SNS記録や、ログを基に、集合知形成、時間経過、キーワードの変化のアルゴリズムと要求条件を明確にする。 判定のための代理変数を設定し、実験・評価を行い、情報の信頼性を定量的に把握していく手法の検討を進めていく。 また、IT 防災ライフライン推進協議会および欧州委員会 (ISA)が課題として取り上げている「信頼ある情報交換」アクションプランを踏まえ、情報開示・流通手順およびメタデータ、参照データソース、ボキャブラリ等の定義に関して検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
うわさデマ流言を定量的に把握するという当該研究の基礎理論を固めるため、今年度は先行研究サーベイ、組織構成員の調査・分析を集中して行った。従って、当初の基礎的な目標には到達しているが、その基礎理論の検証を行っていくための実際のコスト発生は翌年度へ持ち越しとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度の成果を活用して、次年度は①Web質問紙調査(居住都道府県別、年齢別、性別にソーシャルメディアや自治体情報に関する意識調査)および、②分析用のSNS自動ログ収集プログラムの作成、③群れ行動学で知られた様々な知見適用について検討し、アルゴリズムの基本設計に助成金を使用予定である。
|